いよいよスタートした森林環境税

600億円を森林整備に、住宅業界への影響は?

2024年度から「森林環境税」がスタートした。年間1000円が個人住民税に上乗せして徴収され、その年間総額約600億円にのぼる森林環境税は、国を通して「森林環境譲与税」として全国全ての市町村と都道府県に配分され、「森林経営管理制度」を始めとする森林整備やその促進のための取り組みに活用される。森林経営管理制度では、条件が良く森林経営に適した森林については、「伐って、使って、植えて、育てる」の循環利用、「儲かる林業」の実現に向けた取り組みを支援する。当然、木材の需要先である住宅産業にも影響は出てくる。いかに川上から川下までがつながり、国産材活用を促進し、国産材の価値を高める、時代に合った新しい形のサプライチェーンを構築できるかが問われることになりそうだ。また、森林環境税、森林経営管理制度の取り組みが進むことで、脱炭素、ネイチャーポジティブの実現に向けても一層の弾みがつきそうだ。

「伐って、使って、植えて、育てる、の循環する林業経営、儲かる林業をつくることと、自然に戻すものは戻すことを、森林環境税という財源と森林経管理制度を使って実現していきたい」と話す小坂次長

森林には、環境保全や防災、水の浄化、木材供給など様々な多面的機能がある。しかし近年、林業の採算性の低下や、所有者が不明な森林の顕在化、担い手の不足などにより、手入れ不足の森林が増えている。こうした中、令和元(19)年度に、市町村による森林整備などの新たな財源として「森林環境譲与税」の譲与が、市町村が私有林の経営管理を受託する仕組みとして「森林経営管理制度」がスタートした。また、令和6年(24)度からは森林環境譲与税の財源となる「森林環境税」の課税が始まった。各市町村では、この財源を活用して森林の整備を進める。

平成30(18)年12月の税制改正大綱には、森林経営管理制度と森林環境税が一体のものとしてできたことが書かれている。林野庁の小坂善太郎次長は、「森林の多面的機能の恩恵を国民一人一人が受けている。しかし、森林整備を進めるにあたり、所有者の経営意欲の低下や所有者不明の森林の増加、境界未確定の森林の存在や担い手不足などが大きな課題となっている。森林整備を進める上では、やはり地域に最も密着した行政機関である市町村が自ら主体となって管理を行うことが最も合理的であり、新たな制度として、森林経営管理制度が創設された。また、それに合わせて、その市町村が森林整備などに必要な財源として充てるため、森林環境税および森林環境譲与税が創設された」と説明する。


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