震災の経験を今に、そして未来へ
ハウジング・トリビューン、観光経済新聞、東京交通新聞、塗料報知、農村ニュースの専門5紙誌は、2024年度のキャンペーン企画として「地域が創る復興・活性化の未来図~大災害の教訓から~」と題した連載をスタートする。
これまで幾度となく起こった大規模地震。その度にまちが、コミュニティが、暮らしが大きな被害を受けた。しかし、時間はかかっても復興は着実に進められ、新たな姿が浮かび上がってくる。
これまで発生した地震災害からの復興を、5専門紙誌それぞれの視点から取り上げ、地域活性化への道筋を探る。
復興のモデルをつくった阪神・淡路大震災〔ハウジング・トリビューン〕
1995年1月に発生した兵庫県南部地震は、発生当時、戦後最大規模となる阪神・淡路大震災という大災害を引き起こした。また、1948年の福井地震をきっかけに設置された「震度7」が適用された初めての事例でもある。戦後の大規模災害への対策は、この兵庫県南部地震の経験から積み上げられてきたといっていい。
住まいという視点からも、この震災をきっかけに対策が大きく動いた。その最も顕著な例が1998年に成立、施行された「被災者生活再建支援法」である。それまで自然災害による個人の被害は自助努力が原則で公費が使われることはなかったが、同法により、住宅が全壊・半壊などの被害にあった世帯に対して100万円の被災者生活再建支援金が支給されることになった。以降、随時、見直しが行われ、対象や金額が拡充、現在は、最大300万円が支給される。
復興に向けて重要となるのが生活の基盤となる住まいと住民の生業だ。
兵庫県は、1995年7月に「阪神・淡路大震災復興計画(ひょうごフェニックス計画)」をまとめて10年後の復興の姿を描くとともに、同年8月に「緊急復興3か年計画」で特に緊急を要するインフラ、住宅、産業の3分野の計画を策定した。この推進により、住宅の計画目標12万5000戸に対し実績16万9000戸など、1997年度末には目標を達成した。以降、定期的に復興状況の検証を行い、課題に取り組んだ。2015年には震災20年の節目に、同震災と東日本大震災における復興への取り組み課題と成果について12分野を検証し、大規模災害への備えに活用できる提言を取りまとめた。
復興における取組みで特筆されるのは、行政だけでなく民間の取り組みが並行して進められたことだろう。都市再生戦略策定懇話会が「復興事業の基本的な理念と復興への戦略ビジョン」をまとめ民間、行政による復興に向けた検討が進められ、復興計画策定プロセスで住民が参加、意見・提案が行われた。また、住民、団体・NPO、企業などの連携が広がった。特に、100以上の「まちづくり協議会」が立ち上げられ、専門家集団、行政と協働のもと住民主体のまちづくりが進められたことは特筆に値する。“住民参加”が復興を強く後押しした。
以降も東北地方太平洋沖地震、能登半島地震など大規模な地震が発生、今後も南海トラフ地震、首都直下型地震などの発生が予測されている。阪神・淡路大震災からの復興で得た教訓など次代に生かしていくことが何よりも強く求められている。
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