2023.9.7

積水化学工業/リノベる、川崎市・鷺沼で協業第一段のマンションリノベ

両社のノウハウ生かしZEHリノベを推進

2023年4月、循環型住宅マーケット創造に向け資本業務提携を締結した。
その協業第一弾として川崎市・鷺沼でマンションリノベに着手。両社のノウハウを生かしZEHリノベを推進していく。

リノベーションは、大きく「買取再販型」と「請負型」の2つに分けられる。「買取再販型」は、事業者が中古住宅を買い取ってリノベーションし「リノベーション済み物件」として販売するもので、ユーザーは完成物件として実物を見たうえで購入することが可能だ。一方、「請負型」はユーザーが発注者となり事業者が既存住宅のリノベーションを請け負う。個人のライフスタイルにあった住まい、暮らしを実現できることが特徴だ。

リノベる(東京都港区、山下智弘代表取締役)は、請負型のマンションリノべの分野において業界トップの実績を誇る。2010年、中古マンション探しとリノベーションのワンストップサービス「リノベる。」をスタート。ショールームを日本全国各地に展開し、物件探しから住宅ローン、リノベーションの設計・施工・インテリアまで一連の流れをワンストップでサポートしている。年間のリノベーション実績は約500戸、累計5500戸超にのぼる。

マンション買取再販はレッドオーシャン
請負型リノベのノウハウ生かし差別化

そして23年7月、買取再販型のリノベ市場開拓に向け、リノベーション済みマンション「リノベる。U」(リノベる ゆー)の販売をスタートした。首都圏のマンション市場においては、16年以降新築供給戸数を中古成約数が上回って推移する。中でも買取再販型のリノベーション済みマンションの存在感が増加。ライフルホームズの調査によると、22年9月は1787戸と19年比で約2・2倍に増加している。一方で物件の買い取り競争が激化し市場はレッドオーシャン化しつつあるが、同社は請負型リノベで培ってきたデザイン力・提案力の強みを買取再販型リノベに応用することで差別化できると判断。実際に22年に自社でリノベーション済み物件を2件トライアル販売したところ、1か月足らずで販売し大きな手ごたえをつかんだ。

築約41年の「グリーンシティ鷺沼」。専有部の内装をすべて取り払い、リノベーション前のスケルトン状態
積水化学工業が持つ、湿気、熱を遮断する断熱特許工法「マルリノ工法」の採用。コンクリート壁面の不陸に密着し、空気だまりが生じることを解消。断熱性を向上させ、壁体内結露の発生リスクを抑制する
リノベ後のイメージ。請負型リノベで培ってきたデザイン力・提案力の強みを買取再販型リノベに応用する

リノベる。U」では、請負型リノベで蓄積したトレンドやアイディアとノウハウを注入した、間取りや設備・素材の選定を行う。玄関脇の大きな土間スペースや回遊性ある間取り、可動間仕切りや室内窓でリビングとつながった居室など、暮らしやすく快適な住まいを提供する。また、リノベーション協議会の優良なリノベーションの品質基準「R1住宅」を標準化し、配線や配管など見えない部分のインフラの品質を担保する。さらに、保証や定期点検、アフターサービスはもとより、入居後も「かしこく素敵に」暮らすための情報やサービスを特典、優待する「リノベる。」契約者専用サービス「リノベる。Days」も合わせて提供する。

ZEHリノベで9万円超の省エネ効果
ローン減税、支援制度の後押しも

積水化学工業とリノベるは、協業第一弾として川崎市・鷺沼でマンションリノベに着手した。積水化学工業が持つ、湿気、熱を遮断する断熱特許工法「マルリノ工法」を採用することで、ZEH水準の省エネ性能を実現する。「リノベる。U」の中でも、付加価値を高めたリノベ商品の1カテゴリーとして、こうしたZEHリノベを推進していく考えだ。

協業第一弾となるのは、1982年3月竣工の「グリーンシティ鷺沼」(専有面積66・6㎡)で、販売予定価格は5180万円(税込み)。23年9月竣工、販売を開始する。リノベーション費用約275万円(税抜き)をかけて「マルリノ工法」のほか、高効率エアコン、高効率給湯器「エコジョーズ」などを採用。断熱・省エネ性能はUA値0・59、BEI0・77となり、ZEH-M orienntedに適合、BELS☆5を取得する予定だ。ZEHリノベにより、月額7924円、年額9万5086円の光熱費削減効果が見込め、住宅ローン約310万円相当の返済額と同等になると試算する。さらに、ローン減税の上乗せ措置を受けられるほか、国や地方自治体が展開する既存住宅の省エネ化を後押しする支援制度も活用できる。

積水化学工業は、首都圏で一般向けリフォーム事業などを展開しているグループ会社、東京セキスイファミエスと共に、マンションリノベーション事業を首都圏で強化する。22年7月、ライフラインカンパニーで展開してきたマンションリノベーション事業「マルリノ」を東京セキスイファミエスに移管し、ストック事業に関するリソース融合によるシナジー創出を目指す。請負型で、物件探しからサポートし、「マルリノ工法」でリノベーションし、快適な暮らしにアップデートすることを提案する。22年下期の「マルリノ」の売上高は2・5億円。「マルリノ工法」などの拡販により一般向けリフォームの30年度売上高150億円の目標を掲げる。リノベるとの業務提携により、「マルリノ」においても相乗効果を期待する。

今後両社は、「マルリノ工法」採用によるZEHリノベを推進し、両社それぞれが買い取った区分マンションの買取再販「リノベる。U」(BtoC)の拡大を目指す。併せて、依頼が増えている、他社が買い取った区分マンションの買取再販請負(BtoBtoC)、社宅・賃貸の一棟リノベーションも強化していく。積水化学工業 執行役員、住宅カンパニーの宮下健 ストック事業統括部長は、「両社それぞれがストック市場で事業を展開し、かぶっている領域もあるが、それぞれの強みを生かし補完し合えるようにビジスモデルを構築していきたい」と話す。