都会の“学校林”/森林環境税の使い道
都会の“学校林”
仲間が集った席で偶然にも同じような話題で盛り上がった。東京都の日野市と東久留米市に住む二人が、孫たちが樹木、植物に詳しく、昆虫の名前もよく知っているのに感心するというのだ。それぞれが小学生、高校生だそうだが、話を聞くと両校とも「学校林」を保有しており、森林体験学習が活発に行われているのだと言う。
久し振りに聞いた学校林の言葉。学生時代、地方出身者が子どもの頃よく学校の森で伐採したり、間伐したり、木工づくりなどをしたという話をしており、東京出身としては妙にうらやましかったのを覚えている。だが、それも森林が身近な存在の地方なるが故とも思っていたのが、不覚にもいま現在都市部においても学校林が存在し、それがいわば森林環境教育の一環として活用されていることを知り、驚くとともに感激もしたのだ。
実は自分が不勉強なだけで、「学校林」の歴史は古い。明治37年(1904)の文部省令で学校教育の一環として造林が教育上の効果だけでなく学校の基本財産の造成にも役立つとうたわれ、推奨された。昭和26年(1951)のピーク時には累計造林面積は8万ヘクタールに達したという。だが、戦後の高度経済成長とともに学校と森林との結びつきは、基本財産としての利用価値が薄れたこともあって衰退していく。国土緑化推進機構は5年ごとに全国の学校林調査を行っているが、令和3年(2021)調査によると学校林の保有校数は2233校、面積1万6473ヘクタールだ。
ただ、ここで見逃せないのが、全体として減少する一方で、新規の学校林が設置されているという事実だ。令和3年調査では前回調査より30か所、114ヘクタールの学校林が新たに設置されている。
この新しい学校林設置をどうみるか。言うまでもなく体験的教育環境の場としての活用だろう。いまや小学校のときからデジタル教育は必須であり、生成AIも射程圏だ。パソコン相手のひとりボッチのオンライン学習も日常化している。だが、一方で自然環境と共生する場が減ってしまっている。高層マンションに住み、樹木や虫の名前も知らない子どもたちの有り様を親や教師たちが心配するのは当然だろう。学校林が古くて新しい存在として注目を浴びる理由もまさにここにあると言える。
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