2023.7.20

減らない子どもの転落事故

消費者庁・事故調が調査に乗り出す、東京都は新制度を開始

子どもの窓やベランダからの転落事故がやまないなか、消費者庁の安全調査委員会が再発防止に向けた調査を開始する。東京都は新たな認定制度で補助を行うなど、各方面での取り組み強化が進む。

消費者庁の安全調査委員会(消費者事故調、中川丈久委員長)が、子どもの建物からの転落事故の防止を目的に調査を行う。

厚生労働省の「人口動態調査」によると、2016年から20年までの5年間で、9歳以下の子どもが建物からの転落により亡くなったケースは21件に達しており、3~8歳を中心に幅広い範囲で発生している。東京消防庁によると、18年から22年までの5年間に、5歳以下の子ども70人が住宅などの窓やベランダからの墜落で救急搬送されている。また、医療機関を通じて消費者庁に寄せられた事故情報では、入院を必要とする事故のうち転落事故が最も多く約3割を占めており、全体では窓からの転落事故が多いが、死亡事故はベランダからの転落が多い。

年別救急搬送人員(0歳から5歳)

こうした子どもの建物からの転落事故について、消費者庁は折に触れて注意喚起を行い、再発防止の情報提供を行ってきた。しかし、昨年10月から今年5月までの間に7人の子どもが転落事故で死亡するなど、事故は増加の兆しさえ見える。こうした状況に危機感を募らせ、安全調査委員会は今年1年間をかけて再発防止に向けた調査を実施する。調査の詳しい内容や項目、また、成果の公表時期などのスケジュールについては、今後、同委員会と事務局である消費者庁消費者安全課事故調査室と検討する。これまでに発生した事故の詳細な分析や、それらを踏まえた再発防止に向けた情報発信などに取り組むとみられる。

子どもの転落事故防止については、さまざまな取組みが進められている。

今年度、新たな取り組みを開始したのが東京都。従来の「東京都子育て支援住宅認定制度」を抜本的に見直し、新たに「東京こどもすくすく住宅認定制度」を開始した。集合住宅を対象に、基準を満たした物件を認定し、補助を行う。子どもの安全に特化した「セーフティモデル」では、住戸内および共用部分ともに転落防止の項目が設けられ、室外機と手すりの間の距離の確保などを求めている。また、「子供を守る住宅確保促進事業」では分譲マンションの区分所有者を対象に、安全確保のための改修費用等の一部を補助する。例えば、ベランダのエアコン室外機が足がかりにならないような柵の設置や窓からの転落防止のための補助錠等の設置に対し、補助率2/3、補助上限額30万円/戸の補助を行う。

また国土交通省は前年度に引き続き「子育て支援型共同住宅推進事業」を実施中で、補助対象の一つとして「転落防止手すり等の設置」を必須要件の一つとして求めている。

子どもの安全・安心の住まいづくりへの関心がさらに高まりそうだ。