CCUSレベル別年収を初公表
若年層のキャリアパス形成を支援
国土交通省は、CCUSで定める建設技能者の年収について、レベル別年収を試算し、公表した。将来的な目安賃金を示すことで、若い世代のキャリアパス形成を支援する。
CCUSは、技能者の保有資格や現場での就業履歴、社会保険への加入状況などを業界横断的に登録・蓄積し、活用することで、技能・経験の客観的な能力評価を通じて技能者の適切な処遇改善や現場管理につなげる制度のこと。勤続年数や保有資格などを基に能力評価を受けた技能者は、レベル1「初級技能者」、レベル2「中堅技能者」、レベル3「職長レベル」、レベル4「高度マネジメントレベル」の4段階のレベルに振り分けられる。23年5月末時点で119.1万人の技能者、22.6万社の事業者が登録しており、若い世代が安心して働き続けられる建設業界の確立を目指している。
今回公表したレベル別年収は、「令和4年度公共事業労務費調査」で把握したCCUSの能力レベルごとに異なっている賃金実態を踏まえた上で、公共工事設計労務単価が賃金として行きわたった場合に考えられる金額を、週休2日を確保した労働日数(234日)で算定したもの。これまでも業界団体が目安となる年収を独自に設定することはあったが、国が明示するのは初めてのことだ。
能力評価を行っていない技能者についても勤続年数と保有資格をベースに、勤続5年未満をレベル1相当、勤続5年以上10年未満をレベル2相当、勤続10年以上または一級技能士をレベル3相当、登録基幹技能者をレベル4相当と推定し、試算に反映した。なお、同レベルでも年収分布にはばらつきが見られるため、各レベルの上位15%程度を「上位」、平均値程度を「中位」、下位15%程度を「下位」と定め、それぞれ金額を算出した。
例えば、全国・全分野の中位の平均年収はレベル1が501万円、レベル2が569万円、レベル3が628万円、レベル4が707万円となっている。また、電気工事や建設塗装など32職種についても個別にレベル別年収試算を公表した。
客観的な指標に基づいて能力評価レベルがアップすることによる年収の上昇値を具体的に明示することで、業務のモチベーション向上や能力に応じた適正な賃金体系の確立に期待できるほか、若い世代の将来に向けたキャリアパス形成をサポートする狙いがある。
長橋和久不動産・建設経済局長は、「技能・経験に応じた賃金支払いにおける具体例として業界全体で共有し、ここから賃上げや適正価格での受発注につながることを期待する」として積極的な活用を呼び掛けた。
ただ、今回示された金額は法的な拘束力がなく、支払いを義務付けるものではないため、あくまで目安という位置づけだ。
なお、同協議会では今後、中央建設業審議会・社会資本整備審議会基本問題小委員会の議論を踏まえた上で、適切な労務費を行きわたらせるための制度上の対応を検討していく方針だ。
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