戸建リノベ時代の幕開け

性能向上でストック時代を切り開く

戸建住宅リノベーションをめぐる動きが活発化してきた。ストック時代に既存住宅や空き家の活用、また、それらの性能向上が大きなテーマとなっている。住宅の資産価値を高め次代へとつなぐビジネスが急拡大しようとしている。

戸建リノベーション市場への注目が高まっている。

リノベーションに明確な定義はないが、設備機器の交換や内外装の刷新など老朽化にともなうリフォーム工事にとどまらず、ライフスタイルにあわせてカスタマイズする、耐震や断熱などの性能向上を目的に改修するなど、暮らし方を大きく変える提案全般を指すことが多い。これまでマンションを中心に広がってきたが、社会環境や市場環境の変化、居住ニーズの多様化などを背景に「戸建リノベ」への取り組みが急拡大しているのである。

リノベーションは、大きく「買取再販型事業」と「請負型事業」の2つに分けられる。「買取再販型」は、事業者が中古住宅を買い取ってリノベーションし、「リノベーション済み物件」として販売するもので、ユーザーは完成物件として実物を見たうえで購入することが可能だ。国は一定の要件を満たす買取再販住宅の購入に対して登録免許税の軽減(0.3%を0.1%)を用意、東京都が「既存住宅の流通促進民間支援事業」で最大200万円/戸を補助するなど支援策も多く用意されてている。

一方、「請負型」はユーザーが発注者となり事業者が既存住宅のリノベーションを請け負う事業。物件探しから設計・施工まで一社でまとめて対応する事業者もあり、ユーザーの要望を聞きながら、オーダーメイドやセレクトスタイルでリノベーションを行い、個人のライフスタイルにあった住まい、暮らしを実現できることが特徴だ。

今、住宅市場はフローからストックへと大きな変化が進んでいる。国もこうした政策を積極的に進め、リフォームによるストック住宅の品質・性能向上、既存住宅の流通拡大などに力を入れている。例えば、住生活基本計画では25年までにリフォーム市場を12兆円、既存住宅流通市場を8兆円へと倍増させる目標を掲げている。なかでも人が居住する住宅ストック約5360万戸のうちバリアフリー・省エネ基準を満たす住宅はわずか約230万戸であることを踏まえ、リフォームによる品質・性能の向上は大きなテーマであり、国によるさまざまな支援事業が行われている。

一方で、ユーザーニーズの変化も見逃せない。世帯収入の伸び悩みに加え、近年の部資材価格やエネルギー価格の高騰などで住宅価格の高騰が進む。既存住宅の購入は新築に比べてコストが安く、その購入に対する抵抗感が薄れている。「令和4年度 住宅市場動向調査」によると、既存住宅を購入した人の「既存(中古)住宅にした理由」は、「予算的にみて中古住宅が手頃だったから」(63.4%)、「新築住宅にこだわらなかったから」(47.9%)、「リフォームで快適に住めると思ったから」(33.1%)がトップ3である。リノベーションすることでより自分らしい住まいを実現することが可能ということで、既存住宅の購入と同時に大きなリノベーションを行うケースも増えている。


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