2023.6.5

(一社)住まいの屋根換気壁通気研究会、住宅外皮マイスター合格者の交流会を開催

小屋裏換気基準のルーツが判明、基準見直しを提起

住宅外皮マイスター合格者が参加する交流会を開催した。ネットワークを拡大し、交流、情報交換を活発化することで、住宅の耐久性、品質向上に貢献していきたい考えだ。

「住宅外皮の設計、施工ができる人材を増やしていく必要がある」と話す神戸理事長

住宅外皮には、外部から浸入する雨水や内部で発生する結露に起因する劣化への対策、また、設計施工面で防水、通気換気を両立するための広範な知識と応用力が求められる。(一社)住まいの屋根換気壁通気研究会(理事長=神戸睦史ハウゼコ社長)は、住宅外皮マイスター制度の創設により、木造住宅の設計、工事、資材製造・供給、検査、研究などに携わる技術者が備えるべき知識と技術力のレベルを明確にし、住宅の耐久性、品質向上に資する有用な人材の育成と確保を目指す。木造住宅の屋根、外壁、バルコニー、基礎および床下を含む外皮構造、および必要性能に関する十分な基礎知識を有し、住宅外皮の性能確保、劣化抑制、基準適合に活用する能力を備えていることが合格の条件となる。受験資格は、木造住宅の外皮の設計、施工管理、工事、資材製造・供給、研究、その他などに関わる通算合計5年以上の実務経験者。受験資格は、木造住宅の外皮の設計、施工管理、工事、資材製造・供給、研究、その他などに関わる通算合計5年以上の実務経験者。神戸理事長は、「住宅の高性能化、高気密化が進む中で、注意、対策を怠れば、外部から浸入する雨水や内部で発生する結露に起因する劣化は発生しやすくなっている。住宅外皮の複雑な構成を理解し、住宅外皮の設計、施工ができるオールマイティな人材を増やしていく必要がある」と話す。

石川理事は「米国およびカナダにおける住宅小屋裏換気基準の歴史から学ぶもの」と題し記念講演を行った

2022年11月に住宅外皮マイスター資格制度の第2回資格試験を実施、130人超の応募があり、104人が合格した。第1回試験の合格とあわせて計248人が住宅外皮マイスターとして認定された。5月11日には、住宅マイスター同士の交流会を開催し、合格者への資格証授与式を行った。また、カナダのビルディングエンベロープエンジニアの資格者であるKIMI ITO氏もリモートで参加。カナダでは「ビルディングエンベロープ」という建築外皮分野の体系化、法整備が進み、一定以上の規模の建築物を建てるには、構造や温熱とともに、ビルディングエンベロープの専門家の監査を受けることが義務化されている。「建築の外皮分野は、非常に広い範囲の知識が必要。住宅外皮マイスター合格を機に改めて我々の仕事の意味、役割と責任を再認識してほしい。ぜひバンクーバーで視察ツアーを」とあいさつした。

また、同会の石川廣三理事(東海大学名誉教授)は、「米国およびカナダにおける住宅小屋裏換気基準の歴史から学ぶもの」と題し記念講演を行った。米国とカナダのビルディングコードには長い歴史があり、住宅の小屋裏換気基準はその当初から規定され、定期的に改定を重ねている。その改定の経緯は、我が国の小屋裏換気基準にも大きな影響を与えてきた。石川理事は、「日本の小屋裏換気の開口基準は1955年の米国の木造住宅構造指針の推奨値が原典であることが分かった。米国・カナダのビルディングコードの小屋裏換気規定は定期的に見直され、屋根構造や要求性能の変化が反映されている。一方で、日本では40年以上、小屋裏換気の基準の見直しは行われていない。現在の住宅で起こりうるリスクを踏まえて、基準の見直しが必要ではないか」と問題提起した。