愛する子どものために/産む。育てる。に最優先の支援を

愛する子どものために

ロシアのウクライナ侵攻は長期化、泥沼化の様相を見せはじめているが、現地からの映像や報道で目につくのがウクライナの女性兵士の姿だ。ウクライナ軍の約2割が女性兵士と言われ、最前線で闘う兵士は5000人近いともされる。男性には総動員令が発せられているが、それでも戦力不足はいなめず女性も従軍せざるを得ないのだ。ゼレンスキー大統領も3月8日の国際女性デーに合わせて女性兵士への感謝の念をあらわす声明を発表している。一部には女性兵士を愛国心の象徴として露出させているとのうがった見方もあるが、女性兵士が前線で闘っているのは事実だ。ジェンダー公平性を唱えるむきもあるが、やはり女性兵士の姿は胸が痛む。

女性兵士のことで思い出されるのはもう30年ほども前になる中東の湾岸戦争の時のエピソードだ。ニューヨークタイムズに、当時のブッシュ大統領が年頭教書で数行を飛ばして読んだという記事がのった。そして、これは間違えたのではなく、あえて読まなかったのだと。この空白の数行には湾岸戦争に派遣された女性兵士、それも子供のいる母親の兵士が子どもにあてた手紙について書かれていた。当時、湾岸戦争に派遣、従軍した兵士のうち12%が女性で、このうち20%が母親だったという。そして戦争突入が必至となるなかで母親兵士は故国の家族に最後の手紙と銘打って出す。その多くが、愛する子どものために戦場にきている、死を賭して戦う、との趣旨の文面が綴られている。ブッシュ大統領はこの母親兵士の国を想い、家族を想い、子どもを想う気持ちの尊さを讃え、感謝の意を伝えるつもりだった。だが、読めば涙になってしまうと、あえて飛ばし読みをした、と記事は説明する。

この話を聞いたときの感動を今も覚えている。そして親というのは、いつも子どものこと、家族のことを想っているのだとつくづく感じもした。ウクライナの女性兵士たちにも多くの母親兵士がいることだろう。そしてロシアにも。“良い戦争なんてない”のだ。砲火の一日も早く止まんことを。

J・Jルソーの「子どもへの唯一の教訓、それはだれにも決して害を与えないということだ」も頭に浮かぶ。


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