住宅トップランナー制度 26年度を目標に分譲マンションも対象に

追加1000戸以上の供給業者は強化外皮基準の適合が必要に

2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向け、
住宅分野の省エネ化へ向けた取り組みが強化されている。住宅を供給するうえで省エネ性の高さは必須条件となっていきそうだ。

「2020年の菅元内閣総理大臣のカーボンニュートラル宣言で、住宅業界の省エネ性能向上に対する風向きが急激に変わった」と住宅事業者は口をそろえる。2019年度のエネルギー消費の割合で、建築物分野は3割を占めており、カーボンニュートラルに向けた取り組みの中でこれらの分野のエネルギー消費を抑えることが急務となったのだ。

21年に閣議決定した「エネルギー基本計画」では、2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指すこと、建築物省エネ法を改正し、それまで省エネルギー基準適合義務の対象外であった住宅、小規模建築物の省エネルギー基準への適合を2025年度までに義務化することなどが取りまとめられた。

住宅の省エネ基準の適合義務化に向け、環境整備は着々と進められている。例えば、2023年4月からは、(独)住宅金融支援機構が提供する、住宅ローン【フラット35】の省エネ技術基準の要件が強化された。これまで【フラット35】に求められていた「断熱等性能等級2」から、2年前倒しで省エネ基準への適合が必須となった。

「エネルギー基本計画」においては、2030年度以降新築される住宅について、ZEH水準の省エネ性能の確保を目指すことなどが位置付けられている。こうした背景から、国土交通省は分譲マンションについても、更なる省エネ性能向上の取組が必要とし、住宅トップランナー制度の対象を分譲マンションにも拡大することとした。

「住宅トップランナー制度」は2008年の建築物省エネ法改正の際に、高い省エネ性能を有する新築住宅の供給を促進するための方策の一つとして導入された。省エネ性能基準(住宅トップランナー基準)を定め、断熱性能の確保や高効率な設備機器の導入などによる、一層の省エネ性能の向上を誘導。目標年度までに基準を達成しない場合には、必要に応じて国土交通大臣が勧告・公表・命令などを行う。

当初、年間150戸以上を手掛ける建売戸建住宅事業者を対象として、平成20年標準住宅(平成11年省エネ基準の外皮に、平成20年時点の標準設備を導入した住宅)の一次エネルギー消費量に比べ10%の削減を求めた。結果として、大手の住宅事業建築主が供給する分譲戸建住宅のうち9割以上がトップランナー制度に適合し、住宅の省エネ性能向上に大きく寄与した。17年度からは、基準適合の目標年度を2020年度に設定し、一次エネルギー消費量を平成20年標準住宅と比べて概ね20%の削減を求めた。これは現行のエネルギー消費性能基準から15%削減という大幅アップである。 

2019年11月からは、注文戸建住宅、賃貸アパートも住宅トップランナー制度に追加。目標年度を2024年度とし、注文戸建住宅は年間300戸以上を供給する事業者を対象に、省エネ基準に対して25%削減(当面の間は20%削減)、賃貸アパートは年間1000戸以上供給する事業者を対象に、同10%の削減を要求する。 

住宅業界をリードする大手ハウスメーカーでは、住宅の省エネ性能の向上が着実に進められてきた。例えば、(一社)環境共創イニシアチブによると、2021年の戸建住宅におけるZEHの実績は、「nearly ZEH」、「ZEH oriented」を含むZEHシリーズの累計で7万8431棟となった。このうち、注文住宅のハウスメーカーのZEH化率は、2016年度の27・4%から5年間で大きな伸びを見せ、60・8%に達した。工務店のZEH化率は2016年の4・7%から10・7%の微増となりハウスメーカーとの差が浮き彫りとなった。省エネ基準の適合義務化でのボトムアップが図られる一方で、中小事業者の性能向上がこれからの課題となる。

トップランナー制度以前から
分譲マンションでも省エネ化が加速


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