地価公示、2年連続で全用途平均上昇
コロナ前への回復傾向が顕著に
国土交通省は、全国2万6000地点を対象に、令和5年1月1日時点の価格を調査し、1年間の地価動向として「令和5年度地価公示」を発表した。地域や用途などにより差があるが、都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となった。
圏域別に、住宅地の平均変動率を見ると、三大都市圏は、東京圏の2.1%、大阪圏の0.7%、名古屋圏の2.3%と、それぞれ2年連続で上昇した。都市中心部や生活利便性に優れた地域では、低金利環境の継続、住宅取得支援施策などによる需要の下支え効果もあり、住宅需要は堅調であり、地価上昇が継続している。生活スタイルの変化による需要者のニーズの多様化により、郊外部にも上昇範囲が拡大している。
地方圏の住宅地は、2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。特に、地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)の住宅地の平均変動率は8.6%と10年連続の上昇、上昇率が拡大している。また、四市の中心部の地価上昇に伴い需要が波及した周辺の市町でも、高い上昇率を見せている。さらに、地方四市を除くその他の地域の平均変動率は0.4%と28年ぶりに上昇に転じた。最も上昇率の高い都道府県は北海道(7.6%)、県庁所在地は札幌市(15.0%)であった。
大手デベロッパー各社のトップも、「全国の住宅地をみると都市中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた周辺地域では地価上昇が継続するなど根強い需要がある」(東急不動産・岡田正志 代表取締役社長)、「住宅地は、希少性の高い都心や生活利便性の高い地域を中心に、需要が堅調に推移」(住友不動産・仁島浩順 代表取締役社長)、「住宅は、都心の高額物件の需要が引き続き旺盛、インバウンドニーズが徐々に顕在化しており、『ザ・パークハウス京都河原町』ではその引き合いを実感している」(三菱地所・吉田淳一 執行役社長)とコメントするなど、需要回復への手応えをつかんでいる。
なお、毎年9月に公表される都道府県地価調査(価格時点は7月1日)と地価公示の共通地点における半年ごとの地価変動率を見ると、住宅地、商業地の全ての圏域で上昇となり、概ね後半で上昇率が拡大しており、上昇基調にあることがうかがえる。
地価上昇は、コロナ前の水準に需要が戻りつつあることを示す一方で、不動産価格の高騰により住宅購入の検討者などにとってデメリットがあることも否めない。近年、資材高騰などの影響により住宅価格は高騰し、注文住宅市場不振の要因の一つになっている。地価上昇の今後の動き、さらに金利の先高観などが、住宅市場にどのような影響をもたらすのか、注視していく必要がある。
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