求められる多様な住宅購入の選択肢

賃金は上がらず住宅価格は高騰

中流の危機が進行している。国税庁の「民間給与実態調査」によると2021年の給与所得者の平均年収は433万円、平均年齢は46.9歳であった。世帯所得の中央値はこの25年で約130万円減少している。世帯所得が伸び悩む一方で、資材価格高騰を背景に、住宅価格の値上がりが続いている。特にここ5年の上昇幅が大きく、建築費だけで約1000万円上昇、さらに都市中心部や生活利便性に優れた地域における地価上昇も拍車をかける。住宅価格高騰の影響で住宅販売にブレーキがかかり、新設住宅着工も伸び悩む。特に不振が続くのは持ち家で、2022年は年間を通じて、前年同月比マイナスとなった。加えて、金利上昇時代に入り、今後ますます住宅購入へのハードルは高まると見られている。とはいえ、住宅業界も手をこまねいているわけではない。残価設定型ローンや、譲渡型賃貸、定期借地などを活用した新しい住宅購入の選択肢を用意し、不安を解消して、需要を喚起しようという動きが見え始めている。

所得が伸び悩む若年世代
住居費負担割合が増加

30歳代男性の平均年収推移

国土交通省が公表する2022年度の住宅経済関連データからは、住宅一次取得世代である30歳代の厳しい所得・雇用環境がうかがえる。国税庁「民間給与実態調査」によると、平均年収は、30~34歳男性は、1998年の497万円から、2020年の458万円と7.8%減少、35~39歳男性は、1998年の578万円から、2020年の518万円と10.4%減少している。また近年、失業率が減少している一方で、雇用が不安定かつ賃金の低い非正規雇用率が年々上昇しており、2003年に3割弱であった非正規率(全体)は2020年に37.2%まで高まっている。

若年世代における住居費負担の割合も顕著に増加している。総務省「消費実態調査」および「2019年全国家計構造調査」によると、30歳未満の勤労単身世帯の1カ月当たりの消費支出に占める住宅費の割合は、1989年頃は1~2割程度であったが、次第にその割合が高くなり、2019年では男女ともに約4分の1を占めている。

資材高騰で住宅価格も高騰
この5年で増加幅拡大

一方で、資材やエネルギー価格の高騰により、住宅価格の高騰が進んでいる。

国土交通省が公表する「建設工事費デフレーター」によると、建設工事費(住宅建築)は、2005年を基準(100)として、2021年には126.7にまで上昇。2018年の115.7から3年で10ポイント以上上昇している。

また、国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、注文住宅の建築費(首都圏)は、2017年の2958万円から、2018年3558万円、2019年3301万円、2020年3510万円、2021年4077万円と急増し推移している。

(一社)住宅生産団体連合会がまとめた「戸建注文住宅の顧客実態調査(2021年度)」によると、4大都市部の住宅取得費は、特にここ5年の値上がり幅が大きく、2017年度の4889万円と比べて、2021年度は18%増の5783万円にアップ。これに伴い年収倍率も上昇しており、2001年度4.3倍から、2021年度6.4倍に上昇。借入金の年収倍率は2001年度2.87倍から2021年度5倍に上昇している。


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