飛騨市が皆伐跡地の更新状況を公表へ

天然更新のグレーなイメージを払拭

利用期を迎える国産材を活用して林業の成長産業化に導くにはどのような取り組みが求められているのか。林材ライターの赤堀楠雄氏が地域で芽生える国産材活用の事例をルポする。

以前、何度か取り上げた「広葉樹のまちづくり」を推進している岐阜県飛騨市(連載18、19、20参照)では、市の事業を利用して広葉樹林を皆伐した伐採跡地の天然更新状況を公表するという独自のシステムを来年度から導入することを決めた。その意義を検証する。

伐りっ放しの天然更新も「造林」

林業関係者以外にはあまり知られていないが、樹木を伐採する際には当該森林が所在する市町村に伐採届を提出することが義務付けられていて、その際には伐採後の造林方法も届けることになっている。

「造林」というと木を植えることかと思いたくなるが、ここが専門用語のわかりづらいところで、植林するだけでなく、自然に木が生えてくることを期待する天然更新も「造林」の範疇に含まれる。天然更新とは要するに伐りっ放しで植えないという選択で、切り株からの萌芽更新や種から芽が出て自然に森が再生されることに期待するわけだ。つまり、伐採届を提出する際には、その後の造林方法として植林するか、天然更新にするかを選択して届けることになる。

伐採届はあくまでも「届け」であって、その内容の適否が審査されるわけではない。受ける市町村は受理するだけだ。保安林の場合は伐採後の植林が法的に義務付けられるが、そうでなければ植林の義務はない。造林手法として天然更新を選ぶことも可能なのである。

「植えない」という造林手法を選ぶというのも妙な話で、もっとわかりやすく「植林」か「天然更新」かを選ぶとした方がいいと思うが、現行制度上の「造林」という用語の範疇がそれを許しているのだから仕方がない。ともかく、植えないことも普通に選べるわけだから、伐りっ放しで利益だけ得たい場合にそうすることを妨げるものはない。そのため、林業の採算が悪化している状況下で、全国的に天然更新が選択されるケースが増え続け、最近では皆伐跡地で植林されているのは全体の3割程度に過ぎないとも言われる。

皆伐後2年が経過した飛騨市内の広葉樹林。確実に更新されていることが確かめられた


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