2023.1.30

YKK APの新社長に魚津副社長

樹脂窓の分譲住宅への拡大、リサイクルの前倒し・拡充など打ち出す

4月1日付で新社長に魚津副社長が就任する。樹脂窓の分譲住宅への拡大、海外事業へのさらなる注力などを打ち出した。

魚津副社長(左)、堀社長(右)

YKK APが社長交代を発表した。4月1日付で現代表取締役社長の堀秀充氏が代表取締役会長に、新社長に魚津彰取締役 副社長 海外担当が就任する。

同時に、代表取締役会長の吉田明氏が取締役に、取締役 副社長 営業担当の山地慎一郎氏が取締役 副会長に、取締役 副社長 CHROの松谷和男氏が取締役 CHROに、取締役 副社長 業務改革担当の大谷渡氏が取締役に異動となる。

堀社長が社長に就任したのは2011年6月。その年の3月には東日本大震災が発生。また、4月にはライバル会社であるトステムが新日軽や東洋エクステリアなどを合併しLIXILとしてスタートした年でもある。以降、樹脂窓の拡大などYKK APの事業拡大を進めてきたが、同社の65歳定年制を踏まえて社長を退く。「YKK APの創業者である吉田忠裕前社長の想い、また、企業理念などバトンを次につなげることができた」(堀社長)と振り返った。

新社長に就任する魚津彰取締役 副社長(1962年生)は、85年に同社に入社、2013年に執行役員 営業本部 窓事業企画部長、17年に住宅本部長、19年に同営業本部長、21年に上席執行役員 住宅本部長、同年取締役 上席執行役員 住宅本部長、22年に取締役 副社長 海外担当を歴任してきた。「これまで建材事業の営業畑一本できた。樹脂窓事業を拡大させた立役者であり、副社長として海外事業展開でも力を発揮」(堀社長)と、新社長への白羽の矢が立った。

魚津取締役 副社長は新社長就任にあたり、方針として①地球環境への貢献、②顧客への新たな価値の提供、③社員幸福経営―という3点をあげる。

「地球環境への貢献」については、「これまで樹脂窓を中心に高断熱窓の普及を進めてきたが、今後、さらにその普及を加速していきたい」と樹脂窓の拡大に力を入れる。具体的には、これまでの新築住宅中心から分譲住宅へも普及を広げる。また、リフォームによるストック住宅の高断熱化、ビルの高断熱化を進める。

また、アルミのリサイクルについて「社外も含めて2030年に80%」という計画を「社外も含めて2030年に100%」に高め、樹脂窓の樹脂について「2028年に社内のリサイクルを100%」を「社外も含めて前倒しで実現」する。

「顧客への新たな価値」については、「エンドユーザー、プロユーザーに商品は評価されているが、付随するサービスはまだまだと考えている」と、システムを含め顧客への新たな価値の提供を進めていく。

「社員幸福経営」は、拠点に出向いて社員の意見を聞いて施策に反映する、また、役職手当と資格手当を拡充し、23年度3%以上の昇給を掲げた。

資材価格の高騰が響き減益
2023は価格改定の効果

樹脂窓の分譲住宅への展開にも注力

AP事業の2022年度の業績は推定で、売上高5063億円、前年度比13%増で、内訳は国内が同9%増、海外が同42%増とともに増加となった。しかし、営業利益139億円、同20%減、経常利益178億円、同4%減と減益の見込み。好調な海外事業の一方で国内事業が大きなブレーキとなった。例えば、営業利益では国内が同55億円減、海外が42億円増である。国内事業の減益は、資源高による220億円の損失が大きな要因で、価格改定による効果170億円でカバーしきれなかった。一方、海外については「商習慣の違いにより価格改定がスムーズに進み、その効果が早く出た」(堀社長)という。

国内事業を細かく見ると、住宅事業の推定売上高は同5%増。樹脂窓が同7%増、アルミ樹脂複合窓が同16%増と高付加価値による需要創造が進んだ。樹脂窓については「物足りない数字。住宅価格高騰のなかで注文住宅が減少したことが響いた。一方、分譲住宅が好調に推移しており、今後、分譲住宅に対する樹脂窓販売に力を入れる。」(堀社長)

エクステリア事業については、建物と外構の一体設計提案に力を入れており、カーポートが同7%増、門扉・フェンスが同12%増と、全体で同5%増と好調に推移した。また、ビル事業も首都圏強化、改装提案強化により同15%増。新築が同17%増、改装が同11%増とともに好調だ。

国内市場においては資材価格の高騰が利益を圧迫しているが、「2023年から価格改定の効果がフルイヤーで効いてくる」(堀社長)と、23年は利益面でも明るい見通しを立てている。

一方、海外事業については、北米が住宅向け、ビル向けともに好調で同41%増であったほか、中国が同34%増、台湾が同36%増、インドネシアが同34%増と好調に推移した。この一年間、海外事業を担当してきた魚津副社長は「市場のポテンシャルは大きい」と、特にアジア市場に力を入れていく考えだ。

世界の窓のリーディングカンパニーに

魚津彰取締役 副社長

YKK APグループの4年ごとの中期経営計画を重視し、しっかり達成していきたい。さらには2030年にありたい姿、あるべき姿のビジョンを策定して、高い目標を設定して、全員でチャレンジしていきたい。私が描く2030年のあるべき姿は、世界の窓、カーテンウォールのリーディングカンパニーになることで、地域の住環境向上に貢献していきたいと考えている。

私はこの一年間、海外を担当したが、やはり市場のポテンシャルは高い。ただ、特にアジアにおいてはビジネスモデルが確立しているとは、まだ考えておらず、しっかりと利益が出る体制を構築していきたい。また、成熟した市場の欧州への進出も視野に入れながら進めていきたい。