高齢者の増加をビジネスチャンスに 新たなマーケットが登場の予感

拡大必須の注目マーケット 高齢者市場

団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」を目前に、高齢者の住まい方にも多様化が進む。住まいの資産としての活用や住み替え需要など、2023年は、高齢者を取り巻く地域や住宅サービスなどの環境も大きく変わっていきそうだ。

総務省の「人口推計」によると、2022年9月15日時点での日本の65歳以上の人口は、3627万人で日本の総人口の29.1%を占め、過去最高となった。国立社会保障・人口問題研究所は、今後も65歳以上の人口は増加が続き、2036年には国民の3人に1人が65歳以上となると推計している。高齢者の一人暮らしも増えている。厚生労働省の「2021年国民生活基礎調査」によると、2021年の65歳以上の者がいる世帯の世帯構造は、単独世帯が28.8%と、夫婦のみ世帯の32.6%に次いで多い。また、高齢世帯(65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)の数は、2001年の6654世帯から20年間で、1万6052世帯と1万世帯弱の増加となっている。

高齢世帯が急増するなか、国がその整備に力を入れてきたのがサービス付き高齢者住宅(サ高住)だ。サ高住は、バリアフリー構造であることや、安否確認、生活相談といったサービスの提供が必須で、高齢者が安心して生活できるようになっている。(一社)高齢者住宅協会によると、2011年12月時点では、わずか112棟だった登録棟数は、約10年間で8000棟増加し、2022年8月時点で8112棟となっている。そのうち、安否確認や生活相談といった基本的なサービスに加え、食事提供を行っているのは、96.2%、入浴などの介護を行っているのは49.5%だ。また、全体の75%のサ高住において、1つ以上の高齢者生活支援施設(デイサービスセンターなど)が併設または隣接している。そのため、これまでの住まいでは病院やスーパーが遠かったり、一人で家事をすることが困難になってきた高齢者から支持を得ている。

65歳以上の者のいる世帯の世帯構造の年次推移

一方で、厚生労働省が発表した「健康寿命の令和元年度値について」によると、2019年の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳なのに対し、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は、男性が72.68歳、女性が75.38歳で、2010年からそれぞれ+2.26、+1.76(歳)増加しており、平均寿命の増加分(+1.86、+1.15(歳))を上回っている。自分で生活を送れる元気な高齢者が増えているということだ。高齢者支援を目的とした住宅の整備に並行して、今後はこうした元気な高齢者に向けた住宅の市場も増えていくことが予想される。

リフォーム市場の柱も高齢者へのシフトが進んでいる。平成30年住宅・土地統計調査では、2014 年以降に住宅の増改築・改修工事等が行われた持ち家3万2802件のうち、1万5331件が家計を主に支える者の年齢が65歳以上の世帯だ。リフォームの箇所としては、全年代を通して多いトイレやキッチンなどの水回りのほか、高齢者のいる世帯では手すりの設置や段差をなくすといったバリアフリー化も多い。一方、高齢化時代に、今後の拡大が期待されるのが、窓や壁の断熱改修だ。断熱改修は2050年のカーボンニュートラルへ向けて、省エネの観点から推進が急がれているが、健康へ与える影響も大きい。消費者庁によると、2019年の、65歳以上の人の家および居住施設の浴槽における死亡者数は4900人で、交通事故で死亡する人数(2508人)の2倍近いが、原因として考えられるのがヒートショックによる死亡だ。ヒートショックは住環境における急激な温度変化によって引き起こされ、特に、体温の変化に対する感覚が鈍くなっている高齢者に多い。また、慶應義塾大学の伊香賀教授の研究では、床の温度が低いときに転倒しやすいというデータも出ており、健康に長生きをするためにも住まいの温熱環境は欠かせない。

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