2022.11.18

コンチネンタルホームグループ 山と建築を結ぶサプライチェーン構築

規格型住宅のVC展開も

コンチネンタルホームグループ(栃木県佐野市)は、グループ内で山から建築までをつなげるサプライチェーンを構築し、独自の地産地消モデルを実現している。自ら森林を所有し、製材を行い、その製材を用いてコンチネンタルホームが住宅を提供しているのだ。新たなチャレンジとして、国産材でつくる規格型住宅のVC(ボランタリーチェーン)の展開をスタートさせた。

渡良瀬川流域の森などから伐採された原木を受け入れ、製材へと加工していく

川上から川下までをグループ企業が担うサプライチェーン

コンチネンタルホームグループは、住宅事業を展開するコンチネンタルホーム、不動産事業を担うコンチネンタルホーム不動産、自らが保有する森林の経営を行う渡良瀬森林開発、製材事業などを行う渡良瀬林産、集成材の製造などを手掛けるエヌケーケーという5社で構成されている。

現在、グループの総力を挙げて、林業の6次産業化に取り組んでいる。林業の6次産業化とは、1次産業、2次産業、3次産業というすべての側面を担うことで、1×2×3=6次産業としての林業を具現化していこうという考えだ。

渡良瀬川流域構想で地産地消を形に

渡良瀬林産の製材工場では、渡良瀬川流域で採れたスギやヒノキを製材

コンチネンタルホームグループが林業の6次産業化に乗り出したきっかけは森林を保有したことだった。実際に森林を保有し、その状態の深刻さを痛感したという。グループ会社の渡良瀬林産の飯塚正喜取締役専務は「それまでは木材を使うことばかり意識があり、山側のことまでは考えていませんでした。実際に自分たちで森林を所有し、事態の深刻さを思い知らされました」と語る。

そこから森林の現状や役割を調査し、住宅事業を行う上で、持続可能な森林経営に貢献することが不可欠であると判断したという。2019年に発生した台風19号の被害で、コンチネンタルホームグループのお膝元を流れる渡良瀬川に合流する秋山川が氾濫、周辺の住宅に深刻な被害をもたらした。

森林の荒廃は地域に様々なリスクをもたらす―。そう考え、「まもる、つかう、つなぐ」というコンセプトを掲げ、森林再生に向けた一歩を踏み出した。

地域の森林を健全に保つには、伐採期を迎えた木を使い、計画的に植林を行っていくことが不可欠。

コンチネンタルホームが供給する住宅は年間250棟ほど。これだけでは地域の木材を使いきることは難しい。

そこで、前出の飯塚取締役専務が中心となり、「渡良瀬川流域構想」というものを立ち上げた。これは、先行していた「木曽川流域構想」を参考にし、渡良瀬川流域の原木生産者や製材所、プレカット工場、住宅事業者が連携することで、地産地消の家づくりを促進しようというものだ。渡良瀬川流域では年間750棟分ほどの木材を供給でき、そのうちコンチネンタルホームが年間250棟を使用する。残り500棟分の需要先を渡良瀬川流域構想により確保していこうとしている。

栃木県木造住宅協同組合を事務局として、渡良瀬川流域の関係事業者に参加を呼びかけ、現時点で原木生産者などの林業従事者13社、製材業者9社、木材の販売先となる住宅事業者やプレカット事業者14社が参画している。

製材工場を新設
内部割れを防ぐスギ4面背割材を製造

一方、渡良瀬林産では、製材工場を新たに整備した。中温乾燥機2基、高温乾燥機6基を備え、渡良瀬川流域で採れたスギやヒノキを製材する。生産能力は年間1万2600㎥。

年間1万2600㎥の生産能力を備えた渡良瀬林産の製材工場

この製材工場の大きな特徴が柔軟性だ。需要側の情報に応じて製造する品目を柔軟に変更できる製造ラインとなっている。そのうえで、3カ月前発注を基本としており、注文の状況や市場などの様子を確認しながら、製造する品目を決めている。

また、地域産材を積極的に受け入れており、可能な限り長期にわたり安定的な調達を行うことで、山側の安心感も醸成しようとしている。

乾燥工程での内部割れを抑制する4面背割材

スギ4面背割材という加工方法も推進する。スギ材を乾燥すると、内部割れが生じてしまう場合がある。飯塚取締役専務によると、乾燥方法などにもよるが、平均すると全体の3割、状態が悪いと5割に内部割れが生じることもあるという。

そこで、製材したスギの4面に10・5㎜程度のスリットを入れて乾燥する。すると内部割れのリスクが減り、渡良瀬林産の工場では内部割れが発生する割合を1~2割までに抑え込んでいる。

しかし、4面にスリットを入れてしまうと、強度などには問題ないものの、JAS認定が取得できない。

そこで、製材の段階で一回り大きめに製材し、プレカットを行う前にスリットが入った部分ごと削り取っていくという手法を利用している。これによってプレカット後の製材はスリットがない状態になるというわけだ。

渡良瀬林産と同じくコンチネンタルホームグループであるエヌケーケーでは、地域のヒノキを利用した集成材を製造している。また、プレカットの際に発生する端材を再利用した集成材なども製造しており、木質資源の有効活用を促している。

CADセンターも備えており、プレカットのためのCAD図面などを作成し、材料と共にプレカット工場に提供するといったサービスを行っている。

地域産材への切り替えで受注単価アップを達成

エヌケーケーの工場では地域のヒノキを利用した集成材などを製造

渡良瀬川流域の木材を製材し、市場に供給する体制が整ったこともあり、コンチネンタルホームでは使用する木材を地域産材へと切り替えた。

コストアップ要因になる懸念もあるため、グループ内でも地域産材への切り替えに慎重な声もあったという。しかし、「林業の6次産業化を実現することが地域への貢献につながる」という強い思いのもと、地域産材の活用に踏み切った。「地元の木でつくる住まい」を訴求した結果、受注単価の向上といったプラス面での効果を得ることができているそうだ。

また、渡良瀬林産の製材工場は、ウッドショックなどの影響もあり短期間に黒字化を達成。今後は渡良瀬川流域構想を具現化するために、コンチネンタルホームグループ内での成功体験を他の事業者と共有するステージへと進む。
さらには、地域住民を巻き込んだ形で植林活動などを進めていく仕組みづくりや、次世代の林業従事者を育成するための取り組みなども進めようとしている。

高性能サステナブルハウスのノウハウを地域工務店に提供

地域産材を活用した高性能規格型住宅「KIBACO」

新しい取り組みとして、渡良瀬川流域材を用いた高性能サステナブルハウスのVC展開もスタートさせようとしている。

規格型住宅により業務の効率化などを図りながら、地元の木で作る住宅をより手軽に建てられるようにしていきたい考えだ。

規格型住宅であることは、山側にもメリットをもたらす。使用する製材の品種などを限定することができるため、「売れるあてもなく伐採し、製材する」といったことを抑制できるからだ。さらに、ドローンなどの最新技術を使い、森林に生えている状態で供給可能量といったデータを入手できるようになれば、地域産材で規格型住宅を建てるメリットはさらに大きくなるだろう。

さらに、エヌケーケーの工場で規格型住宅用の大型パネルを製造することも検討している。規格型住宅であれば、大型パネルを在庫しておき、注文が入ればすぐに出荷するという体制を整備することも可能になる。

既に「KIBACO(キバコ)」という規格型住宅を開発し、コンチネンタルホームが先行して販売を開始している。

「KIBACO」は、耐震等級3、HEAT20のG2グレードという省エネ性能を備えており、構造計算なども行う。住宅事業者にとっては、「KIBACO」を販売することで、省エネ基準の義務化や4号特例の廃止といった法制度への対応も図れるというわけだ。

加えて、ITツールを活用した販売手法に関するノウハウなどもVCを通じて提供していくという。

グループ内の企業だけで地域産材の川上から川下までつないだコンチネンタルホームグループ。全国的に見ても非常に珍しいビジネスモデルを構築しており、国産材活用を取り巻く諸問題を一気に解決へと向かわせる可能性を秘めている。