[内閣府:男女共同参画白書]コロナが突き付けた社会の現実 進まぬ男女共同参画、慣行や意識は昭和のまま

白書を読み解く(後編)

コロナ禍は、社会のさまざまなひずみを可視化した。特に、雇用情勢の悪化、DVなど特に影響が大きかったのが女性だ。家族の姿などが大きく変わっているにもかかわらず、賃金格差や慣行などは従前のままであることが浮き彫りになったといえる。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、飲食業や宿泊業をはじめとするサービス業に大きな打撃を与え、非正規雇用労働者を中心に雇用情勢が悪化。また、自殺者の増加、DV相談件数が増加した。こうした問題は、広く社会全般に起こったが、「特に女性の就業や生活への影響は甚大」と「令和4年版 男女共同参画白書」は指摘する。

総務省の「労働力調査」によると、2020年3月に3011万人であった女性就業者数は翌月4月に2948万人に激減した。年平均でみると2019年が3005万人、2020年が2986万人、2021年が3002万人である。コロナ禍で大きな影響を受けたサービス業は女性の就業者が多いことなどが背景にありそうだ(図1)。

また、警察庁のデータによると、2020年の自殺者は2万1081人、前年比912人増加したが、内訳は、女性が7026人と割合は3分の1だが、前年比で935人の増加。一方、男性は1万4055人、同23人の減少である。コロナ禍で女性の自殺者が大幅に増加したのである。この傾向は2021年も継続しており、自殺者の総数は同74人減少し2万1007人となったものの、このうち女性の自殺者は7068人、同42人の増加となっている。

図1 就業者数の推移

こうしたなか、すでに「令和3年度版 男女共同参画白書」では「我が国において男女共同参画が進んでいなかったことが改めて顕在化した」と指摘していた。こうした問題の背景として、内閣府の「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」では、「ひとり親世帯や単独世帯の増加等、家族の姿が変化しているにもかかわらず、男女間の賃金格差や働き方等の慣行、人々の意識、様々な政策や制度等が、依然として戦後の高度成長期、昭和の時代のままとなっている」と指摘している。事実、男女間の賃金格差は、同じ正社員でも年齢とともに拡大する傾向があり、平均をみても大卒女性の正社員の給与は高卒男性とほぼ同水準だ。

家族と人生の姿が多様化
制度・政策の昭和からの脱却


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