[資源エネルギー庁:エネルギー白書]エネルギーは不確実性への対策が鍵 需要の変化、価格上昇など対応が急務に

白書を読み解く(後編)

コロナ禍の需要変化が大きな混乱を招き、さらにエネルギー価格の上昇は先が見えない。電気代・ガス代だけでなく生活用品値上げに至り「エネルギー問題」のリアリティを持つ社会課題となっている。これからの住まいはどこを目指すのか──。

社会に突きつけられている大きな課題がエネルギー問題だ。

コロナ禍においては、世界的な行動制限などによりガソリン、航空燃料などの急激な需要減が起こり、2020年のエネルギー需要は史上初めて前年比4%減となったが、2020年後半以降は経済活動の拡大により急激な回復をみせるなど、大きな混乱が起こっていた。

資源エネルギー庁の「令和3年度 エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2022)では、こうしたコロナ禍がエネルギー面にどのような影響が与えたかをまとめている。

コロナ禍でエネルギー需要減のなか
おうち時間増で家庭だけが需要拡大

図1 各部門におけるエネルギー利用の変化

わが国における2020年度の最終エネルギー消費は2019年度比で1100PJ以上も減少、単年度で見ると2008年のリーマンショックによる落ち込みを超える大きな下落となった。

これを分野ごとにみると、製造業分野が約10%減、業務他(第三次産業)で約5%、運輸で約10%の減少となった。しかし、その一方で家庭部門では約5%の増加となった。外出や消費の自粛により交通需要などが落ち込む半面、テレワークやオンライン授業の広がりなどで在宅時間が増加、自宅でより多くのエネルギーが使われるようになったとみられる。(図1)

エネルギー白書では、家庭部門、業務他、産業部門について、スマートメーターから取得した30分ごとの電力使用量のデータを用いて、より詳細な分析を行っている。

一般家庭や商店向けの低圧電力(100Ⅴまたは200Ⅴ)の動向をみると、2020年4月はいずれの時間帯でも、2019年に比べて電力需要が増加している。2021年も同様だ。緊急事態宣言期間中に外出を控えたため電力消費が増えたようだ。

図2  低圧・住宅エリアにおける、通常時と緊急事態宣言期間中の一日の電力使用量の推移の比較

住宅エリアにおける低圧電力だけに絞ってみると、2020・2021年は2019年に比べて、主に6時頃から21時頃にかけて電力需要が増加している。やはり2020年以降に外出自粛の影響があらわれていると考えられる。さらに2019年に特徴的であった朝の電力需要が、2020・2021年はピークが1時間程度後ろ倒しになった。これについて白書では「テレワークが広がり通勤が不要になった結果、通勤前の準備などの朝の需要の一部が1時間ほど遅い時間帯に使われるようになったことを示唆している」とみている。(図2)

2020年、最初の緊急事態宣言発令後は、特に6時頃から21時頃にかけての電力需要の増加が顕著で、緊急事態宣言による外出自粛の影響が強く出ている。

また、2021年の電力需要は、2019年と2020年の中間あたりの値で推移しており、経済活動などが回復してきている様子がうかがえる。

引き続くエネルギー価格の高騰
不確実性への対応が急務に


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