ニュータウン再生に挑む

このままでは負の遺産に 新たな価値を生み活気を取り戻す取組み

高度成長期に大量に供給されたニュータウン。その衰退が大きな問題になっている。当時の子供たちが巣立ち人口が減少、新たにまちに入ってくる人も少なく高齢化が進み、空き家が急速に増えている。一方で、整ったインフラ、時を経て成熟した周辺環境など優良なストックであるのも事実。かつての活気をどのように今に蘇らせるか、その取り組みが加速する。

高度成長期の夢が荒廃の一途をたどる

戦後、大都市への人口流入が一気に進み、国策として住宅団地の整備が進められた。日本初の大規模ニュータウンである千里ニュータウン(大阪府吹田市、豊中市)が1960年に着工、66年には多摩ニュータウン(東京都八王子市、町田市、多摩市、稲城市)と高蔵寺ニュータウン(愛知県春日井市)が、69年に千葉ニュータウン(千葉県白井市、船橋市、印西市)、74年に港北ニュータウン(神奈川県横浜市)といった大規模な開発が相次いだ。これら以外にも都市部郊外に数多くの住宅団地が開発された。70年代前半が供給のピークであり、72年には年間83団地が供給されている。宅地供給量でみると、日本列島改造ブームの72年度がピークであり、全国で約2万4000haが供給された。国土交通省の調査によると、事業着手年別に団地数は、昭和30年以前が57、昭和40年代が538にのぼる。これら昭和40年代以前に開発されたニュータウンは、首都圏で30km圏域以遠、近畿圏で20km圏域以遠、丘陵部での大規模開発、同一世代が一斉に入居といった特徴を持つ。

こうした団地で進んでいるのが高齢化だ。入居当初は若い親と小さな子供で構成されていた家族は、家族の年齢が高まるにつれて団地内で生まれる子供の数が減り、親世代が高齢化して子世代が巣立つと高齢者世帯となり、空き家発生につながっていく。同一世代が一斉に入居し、入居世帯の年齢階層が極端に偏ったニュータウンだからこそ、一斉にオールド化が進んでいるわけだ。団地供給のピークであった72年からちょうど50年が経過した今、世帯数の減失が急速に始まっているのである。国土交通省の5ha以上の住宅団地を対象とした調査によると、入居開始から40年以上を経過した団地の高齢化率は全国平均高齢化率を上回っており、今後、30年以上経過した団地も含めて、高齢化率が全国平均を大きく上回る住宅団地が急増していくと推計している。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2018年推計)によると、世帯総数は2023年の5419万世帯をピークに減少に転じ、2040年には5076万世帯にまで減少すると予測している。特に、世帯主の高齢化が進み、65歳以上世帯が増加、また、高齢者の独居率も上昇していく。一方、「平成30年 住宅・土地統計調査」によると、空き家数は846万戸、その内訳を見ると賃貸用や売却用ではない「その他空き家」が347万戸(2013年比9・1%増)と、放置された空き家の数が多く、増加していることがうかがえる。

こうした変化が顕著に進んでいるのがニュータウンだと言っていいだろう。丘陵地の開発が多いことから急勾配の道路、階段などが多い。人口減少により近隣の商業施設の維持が難しく、子どもの減少から学校の統廃合も相次ぐ。住宅では設備の老朽化や間取りの陳腐化など。さらに都市中心部から離れた立地など、若年層が転入するには魅力に乏しい。いきおい高齢化は止まらず、空き家が増えていく。

ただ、こうした住宅団地は高い公共施設設備率であるなど、優良なストックであるのも事実。こうした社会的資産をどう活用していくか、かつての活気を蘇らせるのかが問われているのである。

連絡会議を設置し自治体、業界が課題解決に動く


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