2022.10.18

(独)都市再生機構/京都大学/メルカリ 3者連携による共同研究を実施

高齢者の健康とフリマアプリの関係を調査

(独)都市再生機構と京都大学、メルカリは、「高齢者の心身の健康とフリマアプリ利用」に関する共同研究を開始する。アンケート調査などを実施し、フリマアプリが利用者の心身に与える影響を統計的に調査する。

3者連携で共同研究を実施する。右から(独)都市再生機構の赤堀主幹、京都大学の近藤主任教授、メルカリの小泉代表取締役会長

少子高齢社会が進行する中で、高齢者を取り囲む社会状況も大きく変化している。内閣府の「令和4年度版高齢社会白書」によると、65歳以上の女性の約5人に1人、男性では約7人に1人が一人暮らしをしており、孤独・孤立状態に陥っている。また、コロナ禍による外出自粛も他者との交流を減少させる要因であり、高齢者の心身の健康への対策が求められている。

こうした中、今回、(独)都市再生機構と京都大学、メルカリは「高齢者の心身の健康とフリマアプリの利用に関する共同研究」を実施すると発表した。

メルカリが2019年に行った「フリマアプリ実態調査」によると、フリマアプリの利用によって「社会とのつながりを実感するようになった」と回答した60代以上の利用者は26.8%に上る。商品の購入に際して、オンライン上で他者とのコミュニケーションを取ることができるためだ。

また、コロナ禍の前後で利用目的にも大きな変化が見られた。2018年は終活に向けた生前整理が中心だったのに対し、現在では推し活などを背景としたグッズの購入が目立つという。実際に、70代の購入カテゴリーの1位は「K-POP」となっており、フリマアプリの利用は高齢者にとって社会とのつながりや生きがいの創出につながっていると言える。

今回の共同研究ではここに着目する。京都大学大学院医学研究科の近藤尚己主任教授によれば、「多様なコミュニティに属している人は、そうでない人に比べて、健康度や幸福度が高いため、社会的なつながりを数多く持つことが健康リスクの軽減につながる」という。そこで、3者はフリマアプリの利用により高齢者が感じる「社会とのつながり」が多種多様なコミュニティ所属の機能を代替する可能性があるのではないかという仮説を立て、フリマアプリが高齢者のコミュニケーションや心身の健康に与える影響について研究する。

具体的には、メルカリ利用者1000人を対象とした健康や生活に関するアンケート調査などを令和4年度中に実施し、フリマアプリが利用者の生活状況や健康状態にどのような影響をもたらすかを統計的に調査する。

その対象者の一部として見込んでいるのが(独)都市開発機構の運営するUR賃貸住宅の居住者だ。

同機構は昨年からUR賃貸住宅の付加価値向上を図るべく、新規事業を社内公募し、民間事業者と連携した取り組みを開始している。その一環としてメルカリと連携し、千葉県八千代市の高津団地共用部で「メルカリ」の使い方を伝授する「メルカリ教室」を開催。多様な世代約40名が参加し、フリマアプリの活用を介したリアルなコミュニティの形成が図られた。同機構のアセット戦略推進部 新規事業担当 赤堀圭祐主幹は「『メルカリ』を契機とした会話は自然と趣味嗜好の内容になりやすく、リアルのコミュニティを形成する上で絶妙な役割を果たす」と話す。

このように、フリマアプリの利用はリアルな場のつながりをも創出する可能性を秘めている。その事例の統計調査は研究の上でも有用と言えそうだ。