既存住宅流通を盛り上げる取組が必要 空き家活用を地域再生と結びつける工夫も

国土交通省 住宅局 住宅生産課 山下英和 課長

──住宅政策の最新動向を教えてください。住宅市場が抱える問題をどのように見ていますか。

国土交通省 住宅局 住宅生産課
山下 英和 課長

足元では、資材価格が上昇し、住宅価格も上昇しているといった問題がありますが、すこし中長期的な視点では、それ以外にも様々な問題があります。例えば、住宅政策の分野で、既存住宅の流通量を増やし、住宅ストックを重視していこうという方向性を打ち出してから、かなりの期間が経ちますが、既存住宅の流通量、リフォームの実績を見ても概ね横ばいで推移しています。このあたりは積年の課題であり、何とかしていかなければいけない課題の一つだと思っています。

既存住宅を有効活用しようとしても、古いものほど質の面でいろいろと問題があるものも少なくありません。耐震性能、省エネ性能、バリアフリー性能といったことにはじまり、そのままでは使いにくいものが少なからずあります。

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、人が居住している住宅ストック約5360万戸のうち、昭和55年以前に建築された住宅は約1300万戸あり、このうち耐震性能が不足しているものは約700万戸あります。省エネ性能が不十分な住宅も多数あることから、これらの住宅の建て替えなどによる性能向上を進めていく必要があります。また、バリアフリー性能、省エネ性能をいずれも満たさない住宅は約2100万戸あり、リフォームなどによる性能向上を進めていくことが求められています。とはいえ、これは簡単なことではなく、特に耐震性能、省エネ性能、バリアフリー性能の向上をどのように進めていくかは、引き続きの課題です。

住宅取得・リフォーム支援策としてグリーン住宅ポイント制度や、こどもみらい住宅支援事業など、経済的な面で支援を行い後押しすることも必要だと思いますが、さらに既存住宅流通市場、リフォーム市場を盛り上げていく取組が必要なのかもしれません。

既存住宅に関しては性能面で不安があるという声が少なくありません。こうした声に対応して、例えば、瑕疵保険や、まだまだ活用は限定的ですが、既存住宅の性能評価など、ある程度安心して買っていただけるための仕組みの整備を進めてきました。その一方で、既存住宅の中にも、そのままでの状態でも流通することができるものはあります。そうしたものが適切に評価される仕組みも必要ですので、改修工事をしなくても一定の性能を満たしていれば、既存住宅を長期優良住宅として認定する仕組みもこの10月から開始します。しっかり管理を行っているマンションの認定制度もスタートしました。状態がよい既存住宅を適切に評価するという仕組みも合わせて機能させていくことも重要だと考えています。

リフォームに関しても消費者の不安を解消していくことが重要です。いわゆる”悪質リフォーム”のような問題も少なからずあります。リフォームに関する不安をいかに解消し、安心してリフォームをしていただけるようにしていくか。その取り組みの一環として、業務の適正な運営や消費者への情報提供などの一定の要件を満たすリフォーム事業者の団体を国土交通省が登録する住宅リフォーム事業者団体登録制度などを用意しています。

性能向上リフォームの推進も重要な課題だと認識しています。民間企業の方々の技術開発などによって、性能向上リフォームに関するコストなども下がってきていますが、なかなか居住者の方々の意識を性能向上リフォームに向かわせることができないということも事実です。例えば断熱性能を向上することで、間違いなく居住性能や快適性も高まりますが、居住者にとっては「冬になると寒さを感じることがあるが、我慢できないわけではない」と考えてしまうこともあります。こうしたことも性能向上リフォームの普及を難しくしている要因のひとつではないでしょうか。

その意味では、「窓だけを改修する」、あるいは、「普段、主に使用している部屋だけの断熱改修を施す」といった部分改修も、住宅の断熱性能を向上させる現実的な解の一つになるのではないでしょうか。

融資の面で新しい取り組みがスタートします。(独法)住宅金融支援機構は、2022年10月から省エネリフォームで利用できる融資「グリーンリフォームローン」の取り扱いを開始します。

省エネ基準の義務化で性能の底上げ
先を見据え円滑な基準引き上げも

──新築については、どのような施策を展開していくのでしょうか。


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