2022.3.24

近藤建設、ふじみ野市でCLT用いた店舗を建設

コストを抑えて開放的な空間を実現

近藤建設(宇佐見佳之社長、埼玉県ふじみ野市)は、ふじみ野市でCLTを用いた店舗の建設を進める。日本CLT技術研究所が開発したオリジナルCLT構法を採用。同研究所からの構造設計の支援を受け、コストを抑えて開放的な空間を実現した。


近藤建設は、マンション、医療・福祉施設、公共施設、商業施設、工場・倉庫などの企画・設計・施工を手掛ける「ビルディング部門」と、住宅建築一式工事の設計・施工・管理を手掛ける「ハウジング事業部」を持ち、埼玉県内を中心に事業を展開する。

わずか7枚のCLT パネルを外壁部に効果的に配置することで、開放的な空間を実現した

「ビルディング部門」では、主に鉄骨造、RC造の建築物を手掛けてきたが、公共建築物等木材利用促進法が施行された2010年以降、非住宅木造にも取り組み、あらゆる構造に対応できる体制の整備を進めてきた。

2020年には、岡山県岡山市に本社を置く住宅メーカーのライフデザイン・カバヤ(窪田健太郎社長)が運営するフランチャイズネットワーク本部「日本CLT技術研究所」に加盟した。

ライフデザイン・カバヤは2018年に大学教育機関や大手金物メーカーらと共同で、オリジナル接合金物を用いた独自のCLT構法「LC‐core構法」を開発。壁倍率換算20倍相当の壁耐力を実現でき、建築物のコア部分にCLTを効果的に配置することで、CLTの設置枚数を抑えながら開放的な空間を創出できる。また、オリジナル接合金物が柱や梁から露出せず、CLTをそのまま仕上げ材として用いることも可能だ。昨今、SDGsに基づいた環境配慮の観点から、炭素固定化への意識が高まっている。大規模建築物を木で建て、大量の木材を使用することで、CO2の固定、削減効果が期待できる。特にCLTは、スギ、ヒノキ、カラマツといった人工林の間伐材を利用できるサステナブルな建材と言える。

CLT 現し部分に使用した際にも仕上がりが美しく、CLT パネルのもつ木の美しさを損なわない。今回の店舗では、CLTを現しでは使用しない

そこで、CLT構法「LC‐core構法」を用いたサステナブルな木造建築の普及拡大を目的に立ちあげたのが「日本CLT技術研究所」だ。フランチャイズで会員企業を募集し、現在、全国各地のビルダーやゼネコンなど約40社が加盟する。近藤建設 建設統括部 建設営業チームの吉田卓生マネージャーは、「従来の木造工法に加えて、CLT構法『LC‐core構法』にも対応できるようになることで、さらにCO2の固定、削減に貢献できる」と話す。

企画段階から研究所が構造支援
コスト概算示し提案力向上

現在、CLT構法「LC‐core構法」を用いて、ふじみ野市内に店舗の建設を進める。大型ショッピングモールが新設され、開発が進むエリアにおいて、グループ会社の近藤不動産が所有する土地を活用するため、2020年8月から企画及び店舗誘致を行った。「近隣住民に喜ばれると共に、街のイメージ、ブランド向上につながるもの」、「CLT構法『LC‐core構法』を生かしたサステナブルなデザイン」、「SDGsへ配慮した環境配慮の取り組み」という3つのコンセプトで企業誘致を行い、「世界最大のコーヒーチェーン店」の出店が決定した。新設するコーヒーチェーン店は、木造平屋建てで、1395㎡の敷地に、建築面積206㎡、延べ床面積178㎡の店舗となる。最大の特長は、CLTパネル7枚を外壁部に効果的に配置し、20m×6mの店舗内に、柱や耐力壁などは一切なく、視線が通る開放的な空間を実現したことだ。

オリジナル開発したLC-core 金物。壁倍率換算20倍相当の壁耐力を実現する

店舗企画の初期段階から日本CLT技術研究所が構造設計の支援を行った。LC‐core構法の構造計算システムを利用することで、LC‐core構法に適した壁配置を簡易に判定し、耐震性能を維持したままCLTパネル使用量を削減できる。また、スピーディーに構造判定を行い、かつ安価に構造計算書を提供することも可能となる。同研究所のFC事業本部 技術部 技術課の守谷和弘次長は、「企画の初期段階から、簡易な構造検討、壁量検討を行うことで、施主側にコストの概算を示しやすくなり、設計提案をスムーズに進めやすくなる」と話す。

国土交通省の告示で示されたCLT工法は、より安全側に配慮されており、どうしてもCLTパネルの設置数が多くなり、開口部の少ない空間になりがちになることが指摘されている。

対してLC‐core構法では、「パネルの耐力が適正に評価されているため、安全性を十分に確保した上で壁量を減らし、コストを抑え、自由度を高めた設計が可能となり、建物の付加価値を高められる」(守谷次長)。

告示のCLT工法で、今回と同じ店舗を設計すれば、LC‐core構法の設計よりも2倍以上のCLTパネルが必要になるという。また、今回の店舗では、コスト抑制の観点から、天井面をCLTではなく、構造用合板で施工しているが、告示のCLT工法では、構造用合板を使用することはできず、天井面にもCLTパネルを使用することが求められる。

また、現場の作業負担の軽減、工期短縮にも寄与する。LC‐core構法オリジナルCLTの厚さは木造軸組との関係性を重視し、120㎜(5層5プライ)で基本設定。CLTのコア部分と補助材である軸組構造の取り合いがよく、スペーサーが不要になり無駄な工事が少なくなる。さらに、オリジナル接合金物は、一般的なCLT建築とは違い、その大半をCLTパネル生産時に取り付けを行うため、建築現場ではドリフトピン打込みによる組み立てに特化できる。工場で金物を取り付けることで高い精度と品質を確保でき、現場での作業効率も上がり、工期の短縮や騒音の減少につながる。

今回の店舗の建設は、近藤建設がCLT構法「LC‐core構法」を用いて建設する建築物の4事例目になる。今回の店舗の前に、モデルハウス、薬局、個人邸を建設している。「CLT構法を通じて木造建築をさらに進化させ、持続可能な社会の実現に寄与し、『木造に強いゼネコン=近藤建設』という新たな企業ブランドの確立を目指したい」(吉田マネージャー)考えだ。