来たれ住宅業界に 待ったなし本気の人材確保・育成策

大工の減少が止まらない。高齢化などが進み、2010年に約40万人いた大工は2020年に約30万人に減少。2040年には約13万人にまで落ち込むとの試算も出ている。さらに住宅業界においても働き方改革に伴う、時間外労働の規制が始まる「2024年問題」が迫る中で、大工はじめ、職人、現場監督など、住宅の生産現場を担う人材をどのように確保・育成していくのかは待ったなしの課題となっている。住宅事業者は本気の人材確保・育成にのり出し始めている。

野村総合研究所(NRI)が2023年6月に公表した最新の調査データによると、大工をはじめ、配管従事者、左官などを含めた住宅建設技能者は、2040年に、高齢化などにより2020年(約82万人)の約6割にあたる約51万人に減少、大工だけに限定すると2020年の約30万人から2040年には半減以下の約13万人にまで減少すると予測する。NRIは、2040年度の新設住宅着工数を約55万戸(2022年度比約36%減)にまで減少するとも予測。ただし、住宅着工数の落ち込み以上に大工減少のスピードは上回っており、「住宅建設技能者1人当たり約1.3倍の生産性向上が求められている」と指摘する。

若年者が建設業への入職を避ける一番の理由として、全産業の平均を下回る給与水準の低さがある。2020年の建設業男性生産労働者(技能者)の1人当たり年間賃金総支給額は451万円、国が進める処遇改善の効果により2012年の391万円から15.2%増と大幅に上昇しているが、製造業男性生産労働者の466万円と比べ低い水準にある。全産業男性労働者の545万円とはさらに大きな開きがある。

また、建設業の賃金カーブのピーク時期は45~49歳であり、製造業などと比べて早く到来する傾向があり、現場の管理、後進の指導などのスキルが評価されにくいとも言われている。

加えて、最低限の福利厚生であり法令により加入義務のある雇用、健康、厚生年金保険に未加入の企業が多いこと、さらには長時間労働、他産業では当たり前となっている週休2日もとれていないことなども大きな原因となっている。

国土交通省では、官民を挙げて、技能労働者への適切な賃金水準の確保対策、社会保険未加入対策など処遇改善に取り組んでいるが、安定的に若年層の入職者が増え、働き手の中心として建設業を担っていく状況となるには時間を要しそうだ。こうした中においても建設業を取り巻く環境は厳しさを増している。

建設業の7割が人手不足
倒産も過去最悪のペース

ここにきて物価高、人材不足に起因する建設業の倒産件数は増加する傾向にある。帝国データバンクによると2023年に発生した建設業の倒産は、8月までに1082件。既に2022年通年の件数(1204件)に迫るほか、8月までの累計で1000件を突破したのは2017年以来6年ぶりだった。また、6月に単月で160件に達し、2014年10月以来約9年ぶりの高水準となった。このペースで推移すれば、年内の建設業倒産は1600件を超え、過去5年で最多となる。


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