2022.3.15

LIXIL、26年までに高性能窓100%へ

脱炭素時代に窓が変わる

基幹サッシのラインナップを強化、窓改修が好調に推移
3地域以北にはEW、4地域以南にはTWを訴求

LIXILは、「カーボンニュートラルの実現に向けて何ができるか、新築と既存ともに住宅省エネ化が不可欠」(田村光宏 常務役員 Housing Technology Japan サッシ・ドア事業部長)と、新築・既存の両軸で住宅の高性能化を進めつつある。

新築向けについては、高性能窓(熱貫流率2.33W/㎡・K以下の窓)への転換を進めており、新築住宅における高性能窓の割合を現在の80%から2026年3月期に100%を目指している。

その実現に向けて、2021年5月にアルミ窓「サーモスA」、8月に樹脂窓「EW」、11月に「サーモスⅡ‐H/L」、また、今年2~4月にかけてトリプルガラスのハイブリッド窓「TW」を発売と、すべての窓シリーズを刷新した。

「TW」は大開口の窓で景色を美しく切り取る

南北に長い日本の気候などを踏まえ、それぞれのエリアごとに最適な窓を提案していく。また、断熱性や気密性といった性能に加えて、大開口の開放感あふれる空間を演出するデザイン性などを差別化ポイントとして訴求していく考えだ。

主に3地域以北のエリアでは、高断熱樹脂窓「EW」を訴求する。

優れた設計・押出技術と先進的な樹脂リサイクル技術を持つドイツのプロファイン社と共同開発した商品で、トリプルガラス仕様で熱貫流率0.79W/㎡・K、気密性、水密性、耐風圧性などもそれぞれ国内最高水準にまで高め、厳しい気候風土にも対応する。

こうした高い性能に加え、フレームのスリム化とガラス面積の拡大によりインテリア空間を演出する“情緒的価値”を加えた。

もう一つ、樹脂フレームのリサイクル材使用率を従来品比で約3倍にまで高めたことに加え、接着剤不使用で樹脂フレームとガラスの分離回収が容易に可能な「押縁仕様」を採用するなどの環境配慮も大きな差別化ポイントといえる。同社では、将来的には行政と連携した樹脂窓のリサイクルシステムの構築を目指している。

一方、4地域以南向けにはパノラマウインドウ「TW」を訴求する。

アルミと樹脂のハイブリッド構造と、一般的な複層ガラスの約4.8倍の断熱性能を持つトリプルガラスを組み合わせることでHEAT20のG2レベルにも対応する熱貫流率0.98W/㎡・Kという高い断熱性を実現した。

さらに、窓のフレームをスリム化し、ガラス面積を約30%拡大することにより、内と外をつなぎ開放感溢れる空間を演出する。

脱炭素に向けリフォーム提案を加速
環境貢献を打ち出し、消費者への啓発強化

既存住宅の9割が現行の省エネ基準を満たしていない中、「国が掲げる家庭部門のCO2削減量66%削減を達成するために既存住宅の省エネ化は欠かせない」(田村事業部長)と、リフォーム事業を今後のビジネスの成長の基盤と位置づけて力を入れている。

リフォーム向け商品「リプラス 高断熱汎用枠」は、簡単取り付けで窓の高性能化を図れる

住宅サッシ事業の22年3月期の第三四半期までの売上高は1263億円(前年同期比4.4%減)ではあるものの、内窓「インプラス」が同22%増など、リフォーム向けの商材が好調に推移しているという。

リフォーム向けは住宅サッシ事業の売上高の約3割を占めるが、同16%増と好調に推移しており、「新築需要が減少傾向にあるなか、需要の掘り起こしにさらに力をいれる」(田村事業部長)考えだ。

改修提案で特に強く打ち出すのが、今年1月に発売したリフォーム向けの「リプラス 高断熱汎用枠」だ。

同商品は、「TW」の技術をリフォーム用に展開したカバー工法の商品で、一日でスピーディーに取り付けを行うことができる。

リフォーム用でありながら、ハイブリッド窓+トリプルガラスにより熱貫流率1.23W/㎡Kという高い断熱性能を実現できることが最大の特徴。また、室外側にアルミを採用したことで、雨・風・日差しによる劣化を防止する高い強度・耐久性も実現した。
「既存の窓の内側に新しい窓を設置する内窓よりも、しっかりと断熱できるトリプルガラスを」と、ショールームやCMなどを通じて強く訴求していく考えだ。

営業のデジタル化で効率化
気軽に相談できるオンラインSRが好評

営業面では、デジタルコンテンツの活用で効率化を図り、より質の高い提案を目指す考えだ。

同社では、コロナが拡大した20年からいち早くウェブ会議システムを導入し、流通店や住宅事業者に向け営業活動での活用を進めてきた。
対面での営業活動が困難になるなかで、逆に移動時間の削減や面談回数が増加、営業担当だけでなく開発担当が提案できるというメリットを生んだ。

また、「窓」を中心とした付加価値、さらには豊かな暮らしを追求したコミュニケーション機会の創出を狙いに、昨年7月、住宅事業者に向けた窓情報ポータルサイト「マドシル」を開設した。

有識者からのコラムやQ&A、商品情報など、窓を中心とした家づくりのノウハウに加え、施主への提案に活用できる動画やチラシ、施主との打合せを円滑にするコミュニケーションツール「マド相性診断」なども掲載、コンテンツの拡充を進めている。高性能窓が育む理想の暮らしなどをテーマにしたオンラインセミナーも開催している。

一方、エンドユーザーに向けて「オンラインショールーム」の活用を推進してきた。

これまでショールームでは水回り商品の提案が多く、窓やドアの提案が十分ではなかったことが課題であった。自宅にいながら相談でき、特にショールームの閉館時間となる18時~20時まで対応する「ナイトショールーム」が好評で、窓などのリフォーム提案手法として手応えを感じている。カタログなどでは聞きたいポイントがわからないというユーザーが、気軽に相談できるという点が評価されているようだ。

プラットフォームの統一化による商品開発を推進

生産面では、最小部品単位数の適正化、商品プラットフォームを統一化することで従来2~3年かかっていた商品開発期間を約1年に短縮した。
魅力ある商品をタイムリーに開発できる体制の構築と生産性の高い生産ラインを実現した。プラットフォームでは構造の共通設計を行い部品・部材の共通化も実現した。ハンドル・パッキンなどの部品を共通化することで従来比約70%もの部品を削減した。

サッシではこれらを2021年度に発売した基幹シリーズで実現し、「高性能化」、「開放感」、「日射遮蔽」、「ベンチレーション」、「電動化IoT」、「安心・安全」という6つのテーマに沿った機能的価値、また、ブランドコンセプト「風と光を楽しみ、空を味わう。」を具現化する情緒的価値創出、より付加価値の高い商品開発に取り組んでいる。