2022.2.28

温対法改正案を閣議決定 「脱炭素化支援機構」を創設

政府は、地球温暖化対策推進法の改正案を閣議決定した。官民ファンド「脱炭素化支援機構」を創設し、再生可能エネルギー導入などの脱炭素化事業に取り組む民間事業者への財政的な支援を強化する。

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、民間事業者から例えば太陽光発電の初期費用ゼロ円モデルなど、これまでにない新たな提案が行われている。一方で、こうした新たな提案は前例に乏しく認知度が低いといった理由から資金調達が難しいケースがあり、我が国の脱炭素化市場拡大へ向けた課題となっている。

温対法改正による、官民ファンド創設の概要

こうしたことから、政府は地球温暖化対策推進法を改正し、再生可能エネルギー導入などの脱炭素事業に取り組む民間企業に出資する官民ファンド「脱炭素化支援機構」を創設する。脱炭素化事業に対し、国が積極的に出資することで民間の金融機関や企業からの出資を促したい考えだ。

現在、国は「地域脱炭素投資促進ファンド」という枠組みで、民間事業者の脱炭素化事業に対し出資を行っている。(一社)グリーンファイナンス推進機構を通じ、国のエネルギー特別会計から民間事業者の脱炭素化事業へ出資するもので、出資の予算額は48億円を計上している。

今回の新たに創設する官民ファンドは、地域脱炭素投資促進ファンドの約4倍となる200億円を国が出資、さらにこれを呼び水に民間金融機関・企業などからの出資も募り、1000億円規模の出資を目指す。国による出資金額を増やすだけでなく民間からの出資も募り、従来よりも出資額を大きく増やすことで、新たなビジネスモデルの構築を促し、脱炭素化市場の拡大を図りたい考えだ。

出資対象は、大規模・大多数な屋根上や営農型等の太陽光発電、地域共生・地域貢献型の再エネ事業(地熱や中小水力、風力発電等)、プラスチックなどの資源循環、食品・廃材等バイオマスの利用、森林保全と木材利用などを想定している。

住宅関連では、屋根上の太陽光発電の設置や廃材のバイオマス利用、木材利用などの事業が対象になりそうだ。例えば、屋根上の太陽光発電の設置については、「PPAやリースといった初期費用ゼロで設置できる事業を出資対象の一つとして想定している」(環境省)という。こうした事業は住宅での太陽光発電の普及拡大の新たなビジネスモデルとして注目を浴びているが、まだ一般的な認知度は低く、取り組みは一部の事業者に限られているのが実情だ。しかし、今回の新制度で出資が促されれば、より多くの事業者がサービスに参入し市場拡大が期待できそうだ。

官民ファンド「脱炭素化支援機構」の創設を盛り込んだ地球温暖化対策推進法の改正案は、通常国会に提出する予定で、政府は今秋にも同ファンドの創設を目指す方針だ。