真空ガラスのJIS制定 窓の高断熱化に拍車
ストックの断熱改修など、新市場活性化に期待
経済産業省は、真空ガラスに関するJISを制定した。真空ガラスは、2枚のガラスに挟まれた空間を真空状態に減圧して熱を遮断することで、優れた断熱性能を発揮し、究極の断熱性能を持つガラスと呼ばれる。2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、住宅の性能向上のスピードアップが求められている。特に、住まいの中で、最も熱の出入りの大きい開口部の断熱性能を向上させることが重要になる。真空ガラスのJIS制定により、製造者にとって一定の性能を確保しやすく、ユーザーにとって選択しやすい環境が整備されることで、窓の高断熱化に拍車がかかりそうだ。
品質確保の検査・試験方法をより詳細に
真空ガラスについては、2018年に国際規格であるISO 19916‐1が制定された。しかし、この国際規格は設計時の性能評価として、真空ガラスに求められる断熱性能、耐候性といった性能を実際の試験で確認することを主目的とした内容となっている。
一方で、日本において省エネ・住宅市場向けに広く普及していくためには、様々な顧客のニーズに合わせて満足のいく品質で、真空ガラスが数多く製造されることが確保される必要がある。
そのため、国際規格に加えて、断熱性能、減圧の状態、耐候性などについて、その品質を確保するための検査・試験方法をより詳細に盛り込み、日本産業規格であるJIS R 3225を制定した。
制定した真空ガラスのJISでは、断熱性能を表す指標である熱貫流率を、JIS R 3107(建築用板ガラスの熱貫流率の算定方法)で規定する算定方法を引用して求める。国際規格による試験方法で実際に熱還流率を測定し、その測定値が、JIS R 3107による算出値と乖離していないことを確認する。また、断熱性能の区分については、複層ガラスに関する国内規格(JIS R 3209)の最高水準である熱還流率1.1W/㎡K以下より、さらに高い断熱水準の0.7W/㎡K以下を設定した。
また、製品の抜き取り検査の方法として、真空ガラスの2枚のガラスに挟まれた空間が十分に減圧されているかを確認する試験方法を新たに開発した。耐候性を調べる加速度試験については、国際規格により試験方法をそのまま採用。加速度試験前後の熱還流率変化が小さいことを確認する。
真空ガラスを用いて住宅高断熱化、快適な住環境を創出
真空ガラスのJIS制定により、製造者は、より分かりやすい形で真空ガラスの性能を維持でき、消費者にも真空ガラスの性能が信頼あるものとして伝わりやすくなる。
真空ガラスを用いて、住宅の省エネ性能を高め、快適な住環境を創出する提案が増えていく契機となりそうだ。
そして、改めてメーカー各社が展開する真空ガラスに注目が集まりそうだ。
国内では、日本板硝子が1997年10月、世界に先駆けて真空ガラス「スペーシア」を開発した。
厚さは、6.2㎜と薄く、一般的な既存の窓ガラス用サッシに納められる厚さであるため、開口部の断熱リフォームに最適な商品として市場での評価を得ている。
また、2017年6月には、より断熱性能を高めた超高断熱真空ガラス「スーパースペーシア」の開発に成功した。
一般的なトリプルガラスの半分以下の厚みで同等以上の熱還流率を実現している。
パナソニックは真空断熱ガラスの国内建築分野への販売を計画
パナソニックは2017年12月、プラズマディスプレイパネルの技術を応用することで真空断熱ガラスの開発、量産化に成功した。
2019年4月にはAGCと共同で、欧州の住宅市場向けに生産を開始、窓ガラスの改修などの用途で展開している。また、2019年12月には、真空層を支える柱(ピラー)が透明な、業界初の透明ピラー仕様の真空断熱ガラスの実用化に成功。「Glavenir(グラベニール)」という真空断熱ガラスのブランドを立ち上げ販売を強化している。
日本国内においては、エクセルシャノンが2021年6月に販売を開始した樹脂サッシ「シャノンウィンドSPG」に同社の真空断熱ガラスが採用されている。
また今後、AGCと協業により、日本国内の建築分野への販売を開始する計画だ。
同社のハウジングシステム事業部 建築システムビジネスユニット VIG事業推進部の木村猛氏は、「真空ガラスのJIS制定により製品カテゴリーとして認知が進み、要求品質も明示しやすくなり、これまで以上に採用の検討の活性化が進むことを期待している。カーボンニュートラル社会を見据えたストックの断熱改修など、真空ガラスの薄さが活きる市場が活性化していくかが普及への鍵となる」と話す。
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