気密マーケットが動く “C値1.0以下の時代”への対応が不可欠に

今、住宅の性能向上がかつてないスピードで高まりつつある。省エネ基準の適合義務化が打ち出され、さらにZEH水準へとボトムアップが図られる。
また、断熱の等級6、7というこれまでと比較にならないほど高い水準の家づくりも視野に入ってきた。
こうした住宅の高性能化に欠かせないのが気密。省エネで快適・健康な家づくりが進むなか、気密マーケットが大きく動き出そうとしている。


脱炭素化を目指し
求められるさらなる省エネ性

2020年末に菅前内閣総理大臣が「2050年カーボンニュートラル」を宣言して以降、国をあげて脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速している。住宅分野においても、住宅のさらなる省エネルギー化、再生可能エネルギーの導入拡大が大きなうねりとなっている。

国土交通省、経済産業省、環境省の3省による「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」がまとめた住宅分野のカーボンニュートラルの実現に向けたロードマップでは、2025年度に省エネ基準への適合を義務化、さらに遅くとも2030年度までには省エネ基準をZEHレベルに引き上げる方向性が打ち出されている。建築物省エネ法改正案の今国会への提出が見送られ、省エネ基準への適合義務化はいったん棚上げとなったが、次回以降の国会への法案提出が目指されており、大きな流れに変化はない。

2030年の目標として、新築住宅でZEH水準の省エネ性能が確保されていることを掲げており、今後の住宅性能のスタンダードがZEHレベルになることは間違いない。すでに住宅性能表示制度の断熱等性能等級においては、これまでの等級4(省エネ基準レベル)を上回る等級5(ZEHレベル)の設定が決まっており、さらに高い等級6、等級7を創設する検討も進んでいる。

こうしたなかで住宅業界の動きも活発だ。先に経済産業省が発表した2020年度のZEH建築実績によると、ZEHシリーズ全体で6万5846戸、前年度比10.0%増という大幅な増加となった。なかでも注文住宅は6万2560戸とその多くを占め、新設住宅着工戸数に占める割合は24%と4戸に1戸がZEHという時代に入っている。特に大手ハウスメーカーでは供給した住宅のうちZEHの占める割合が56.9%と、6割に迫る勢いだ。

一方で、ここにきて大手デベロッパーの取り組みも加速し始めた。三井不動産は「脱炭素社会の実現に向けたグループ行動指針」を策定、国内のすべての新築物件でZEH/ZEB水準の環境性能を目指すと打ち出した。東急不動産は分譲マンションの基幹ブランド「BRANZ」をリブランディングし、2030年度までにすべての新築分譲マンションでZEHを標準化する。三菱地所レジデンスは「CO2排出量削減戦略」をまとめ、マンション全物件でのZEH‐M Oriented化を目指す。分譲マンションにおいても、今後のスタンダードはZEH水準になることは間違いない。

急速に住宅の断熱化が進むなか、気になるのが”気密はどうなっているのか”だ。

省エネ基準やZEHの基準において躯体に求められているのは外皮平均熱貫流率(UA値)や一次エネルギー消費量削減などであり、気密に関する定量的な基準はない。どれほど断熱性を高めても、すき間だらけのスカスカな家では意味がなく、相応の気密性が求められる。

住宅の脱炭素化に向け、今、”気密”をめぐりどのような動きが起こっているのだろうか。


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