“江戸売り声”が消えた/江戸の暮らしはSDGs
“江戸売り声”が消えた
「なっと、なっとぉー、なっと。なっとおーみそまめ」「葉唐辛子やーい、葉唐辛ぁ子やぃ」「えー、鋳掛ぃっ、えー、鋳掛けっ」──こんな売り声を響かせていた江戸売り声の漫談家、宮田章司師匠がコロナ禍のなか、ひっそりと寄席から、この世から姿を消して半年、淋しさはいなめない。出演者に宮田章司の名を見ると落語もさることながら“売り声”聞きたさに寄席の木戸をくぐったものだった。
宮田師匠の江戸売り声漫談に魅せられたのは何よりも江戸っ子の暮らしぶりが彷彿と浮かんでくるからだ。そのなかのいくつかは自分が子どものときに聞いたことのある売り声が混じっていたせいもある。朝に納豆売り、夕方に豆腐売りなどは今だに覚えているし、アサリやシジミ売りの「あさりーーしーじーみよぉーいっ」の声も。天びん棒に桶やカゴをぶら下げて売り歩く後を「アッサリー、シンジメェー」と口調を真似しながら歩き、親から大目玉を喰らったりしたのも懐しい。
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