地域と職人を育む都市型木造耐火建築のショーケース

事例⑤ ハウステックス(東京都杉並区) 物件:くらもとBASE(東京都杉並区)

 

ハウステックスの代表取締役の佐藤義明氏は、18歳から大工として業界に入った。それから45年以上が経過したが、経営者となった今も大工目線でも現場を見ている。約34年前にハウステックスを設立、バブル崩壊後の厳しい状況も経験した。当初は東村山市で事業を始め、その後西東京市に自宅兼事務所を構え、2001年には小金井市に本社兼展示場を開設。2021年には永福町に本社を移転し、拠点を広げながら、地域に根ざした家づくりを続けてきた。

ハウステックス 代表取締役
佐藤義明 氏

現在は、注文住宅の新築を中心に展開。これまでに約850棟を供給してきた。リフォーム・リノベーション事業展開にも注力し年間約300件の案件を手掛けている。アフターメンテナンスの対応ができる範囲として、東京都内(一部除く)及び埼玉県の一部(所沢市、新座市)、神奈川県の一部(川崎市の一部)を施工エリアとしている。

ハウステックスの「5つの強み」
東京大工塾を立ち上げ技術承継

同社が都内の激戦区で選ばれ続けている背景には、独自の「5つの強み」がある。1つ目は、圧倒的なデザイン力。設計スタッフを擁し、狭小地における光の取り入れ方など、都市部特有の課題を解決するデザイン提案に定評がある。LIXILのメンバーズコンテストで13年連続入賞、過去には新築部門で「全国準大賞」に輝いた実績も持つ。2つ目は、構造へのこだわり。30年以上の歴史から様々な技術者が在籍し、顧客のコストや理想の形に合わせて、木造をはじめ、RC造、鉄骨造まで、幅広い構造・用途に対応できる確かな技術力が同社の強みだ。3つ目は、現代の住宅に不可欠な耐震性能、省エネ性能の追求だ。全棟で構造計算を実施し耐震等級3を標準仕様としている。また、ZEH対応はもとより断熱等級6・7にも対応。採光や遮光、風の通り道など設計に盛り込むパッシブデザインの提案においても豊富な実績を持つ。4つ目は、強固な協力業者ネットワーク。34年の歴史の中で築かれた職人・業者との絆を大切にし、定期的な品質チェックを通じて高い施工品質を維持している。

ダイナミックなデザインが印象的な外観

5つ目は、職人の育成の取り組みだ。建築業界が直面している最大の課題「大工不足」に対応するため、2016年に地域工務店とともに、(一社)東京大工塾を立ち上げた。若い大工を育成するために職業訓練校への通学支援や、メーカーからの賛助会員制度を導入するなど、独自の取り組みを行っており、参加工務店は当初18社から55社超にまで拡大、業界全体で職人を育てるモデルケースとして注目を集めている。「大工がいたら、その工務店は勝ちになる」という佐藤代表の言葉は、単なる自信の表れではなく、失われつつある技術を守り抜くという不退転の決意だ。「最新の設計技術と伝統的な職人の技を融合させ、地域の人々と共に歩みながら、次世代の大工たちが誇りを持って活躍できる未来を築き上げていきたい」と話す。

「木造4階建て」への布石
SE構法採用で明るく開放感のある空間に

ハウステックスは2021年4月、東京都杉並区に新しい拠点として東京都杉並区本社兼ショールームの「くらもとBASE」を開設した。地下1階・地上3階建ての木造耐火建築物で、佐藤代表自身が18歳から大工としてキャリアをスタートさせたため、「最後はやはり木造でしっかりつくりたい」という強いこだわりがあった。

敷地が三角形という特殊な形状であり、一般的な在来工法では耐震等級3の確保が困難だった。そこでSE構法を採用することで、広い開口部を持つ開放的なデザインと高い耐震性を両立させた。木造でありながら鉄筋コンクリート造に匹敵する、柱の少ない大開口の空間を実現。明るく開放感のあるオフィスとショールームが共存している。

幹線道路側に面する、南側の窓には角度をつける工夫が施されている。これにより、夏場の強い日差しを屈折させて熱を和らげるとともに、雨が窓に当たるのを防ぎ、汚れを軽減する効果も持たせている。

また、都心の狭小地では今後、木造4階建てなどのニーズが増えると予測しており、その技術力を示すショーケースとしての役割も持たせている。周囲のRC造の4階建てビルに引けを取らない存在感を木造で実現しており、SE構法による木造建築の力強さと魅力をアピールしている。


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