アジア最大級のIT・エレクトロニクス展示会が開催
最新テクノロジーが描く近未来の暮らし
カーボンニュートラル、スマートホーム…
アジア最大級のIT・エレクトロニクス展示会「CEATEC 2021」が開催、多くの企業が参加した。今年は、カーボンニュートラル、スーパーシティ&スマートシティ、5G、モビリティといった今注目のホットなテーマに基づき、様々な観点から最新の提案が行われた。
2021年もオンライン開催
314社・団体が出展
10月19日〜22日、「CEATEC 2021」が開催された。
CEATECはアジア最大級のIT・エレクトロニクス展示会で、開発中のものも含めて最先端のIoT・AIプロダクト・サービスを目にする機会として注目を集めている。
昨年は新型コロナウイルスの影響を受け、初めてオンライン開催としたが、今年もオンラインでの開催とした。なお、会期終了後も11月30日まで各出展者のブースをウェブサイト上(https://online.ceatec.com/)で見ることができる。
3つの展示エリア(企業エリア、Society 5.0エリア、Co‐Creation PARK)に314社・団体(出展申込数)が出展、海外からの出展も85社・団体あった。また、講演やパネルディスカッションは、2020年の81から134に大きく増やし、展示会を盛り上げた。
【カーボンニュートラル】東芝は太陽光と蓄電池で”新型”を出展
住宅関連の出展で目立ったテーマの一つが「カーボンニュートラル」。その中で特に東芝のブースが注目を集めた。
同社の展示の目玉は“新型太陽光発電〞。その一つが、フィルムに塗って作ることができる「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」だ。軽量薄型で曲げることができるため、既存住宅などの従来は設置ができなかった強度の弱い屋根やオフィスビルの窓など多様な場所に設置することができる。
さらに東芝は、塗布速度を従来の2倍に高め、従来より均一に塗布できる「1ステップメニスカス塗布法」の開発を進める。これにより、フィルム型ペロブスカイト太陽電池としては、世界最大面積である703㎠のモジュールで世界最高エネルギー変換効率15.1%を達成(2021年9月東芝調べ)した。
「現在主流である多結晶シリコンの変換効率の領域に入ったと考えている」と、研究開発センター・シニアエキスパートの都鳥顕司氏は自信を見せる。ちなみに、エネルギー変換効率15.1%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を、東京都23区内の建物の屋上と壁面の一部に設置した場合、原子力発電所2基分(東京都23区の家庭内年間消費電力量の3分の2相当)の発電が見込めるという。
もう一つ、東芝は「タンデム型太陽電池」という新型太陽光発電も出展した。亜酸化銅(Cu2O)太陽電池セルとシリコン(Si)セルを積層した太陽電池で、超高効率である特徴を持つ。亜酸化銅とシリコンは発電波長が相補的であるため、積層してもそれぞれのセルで発電することが可能。発電効率は亜酸化銅セルが10%、シリコンセルが同20%超であり、これらを合わせたタンデム太陽電池全体で30%以上の発電効率が可能となる試算だ。
東芝の実験では、シリコン単体の太陽電池と比較し、タンデム型太陽電池は2倍以上の発電量を得られることが確認されている。
東芝のタンデム型太陽電池では、今のところ発電効率は26.1%まで高めているが、さらに発電効率を高めるため、研究開発を行っているところ。NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の報告によれば、効率31%以上では、太陽光発電による電気自動車の無充電走行が実現可能になるといわれており、発電効率30%台のタンデム型太陽電池技術を、3年後までの完成を目指して開発している。
タンデム型太陽電池は非常に高い発電効率であるため、小さい設置面積で大きな発電量が期待できる。実用化されれば、屋根面積の小さな狭小住宅や、日当たりの悪い場所、日射量の少ない地域でも太陽光発電を行いやすくなるだろう。
東芝は蓄電池でも“新型〞を出展した。
マイナス30℃でも運用できる「水系リチウムイオン二次電池」というもので、同社が世界で初めて開発に成功した。蓄電池はリチウムイオン二次電池(LIB)の普及が進められているが、電解液に可燃性有機溶媒を使用しているため、地震などで大きく損傷を受けるなどした際に火災のリスクがあり、そのため消防法により設置場所に制限も生じる。
一方で、電解液に不燃性水溶液を採用した水系電池は可燃物を含まず安全で、消防法の危険物に該当しないため、設置する際の安全対策を従来よりも大幅に簡略化することが可能。また、設置場所の制限も緩和されるため、住居近くやオフィスビル内にも設置が可能となる。今後、東芝は水系電池の研究開発をさらに進め、早期のサンプル提案を目指す方針だ。
ニチコンは高付加価値な蓄電池
トライブリッドでV2Hの訴求に注力
「カーボンニュートラル」に関し、蓄電池メーカーのニチコンも住宅関連の出展を行った。
同社が描く“未来スケッチ〞というテーマで動画を掲載。太陽電池で発電した電力を蓄電池に溜め、電力の「家産家消」することが当たり前となる未来の暮らしを提案した。
その実現に向け同社が販売を行っている「トライブリッド蓄電システム」「ハイブリッド蓄電システム」「単機能蓄電システム」を訴求。特に、「トライブリッド蓄電システム」については、より自宅のエネルギー自給率を高めるものとして、提案に力を入れた。これは、トライブリッドパワコン、家庭用蓄電池ユニット、V2Hスタンドをセットにしたもので、特に独自のトライブリッドパワコンを導入することで、太陽電池で発電した電力を家庭用蓄電池に溜めるだけでなく、V2H(Vehicle to Home)スタンドを通じて電気自動車の蓄電池へも充電できるものだ。
これにより、蓄電池単体を導入するよりも、自宅の電力の自給率の向上が期待できる。また、停電時も蓄電池とEVの大容量電池の両方からバックアップすることができ、災害時もより大きな安心を得ることができるといったメリットもある。
さらに、蓄電池と電気自動車の電池間の電力移動(エレムーブ)も可能としている。このため、家庭用蓄電池から電気自動車へ電気を移動することもでき、例えば、電気自動車が不在の時にも太陽電池からの電力を家庭用蓄電池に蓄えておき、電気自動車が戻った時に蓄電池から電気自動車に充電することで、電気自動車で使う電気の自給率も高めることが可能だ。
日本自動車販売協会連合会「燃料別販売台数(乗用車)」の統計によると、新車販売における電気自動車の割合は1%程度で、普及はこれからという状況だ。しかし、今後普及してくれば、トライブリッド蓄電池も併せて導入することで、住宅でのカーボンニュートラルの実現に大きく貢献しそうだ。
シャープもPV電力の自家消費を訴求
AIで最適制御、自家消費率を最大化
シャープもカーボンニュートラルの提案に注力。住宅関連では電力の自家消費ソリューション「COCORO ENERGY(ココロエナジー)」を出展した。ココロエナジーはクラウド上のAIがHEMSと連携し、各家庭の電気の使われ方や翌日の天気予報から翌日の余剰電力量を予測、前日夜間の充電量を制御することで、各家庭に合わせて太陽光発電システムの余剰電力を効率的に活用できるようにするものだ。これにより、家庭内の自家消費率は従来48%から68%に向上。こうした点が評価され、(一社)新エネルギー財団の「令和2年度 新エネ大賞」も受賞している。
また、ココロエナジーでは、雷注意報発令時、停電に備えて必要な電力量をAIが予測。蓄電池残量を確認しながら、不足する電力量だけを自動充電することで、災害対策にもつなげる。
また、シャープは太陽光発電、蓄電池についても、最新の商品を展示。太陽光発電については、今年8月に発売したフラッグシップモデルの「BLACKSOLAR ZERO」を訴求した。黒を基調としたデザインによる高い意匠性、4種のモデルを組合せる「ルーフィット設計」により屋根の形状・大きさに合わせて最大限に設置できる。
シャープの強みは、太陽光発電、蓄電池、HEMS、家電を自社で開発・製造していることだ。これにより、一体的なエネルギーマネージメント提案が可能になる。加えて、AIを活用することで、より効率的にエネルギーをマネージメントできるようにしており、住宅の再エネによるカーボンニュートラルの方向性を示すサービスと言えるだろう。
【スマートホーム】京セラはダイキンと共同開発のパフォーマンス向上起床システムを参考出典
「スマートホーム」も、今回のCEATECで住宅関連において提案が目立ったテーマだ。その中で、注目を集めたのが京セラのブースだ。
同社はダイキン工業と共同で研究した「パフォーマンス向上起床システム」を参考出展した。
同システムは、ダイキン工業の空気の渦(うず)輪(わ)制御技術による柔らかで優しいリズムの空気刺激と、京セラの紫色LEDとRGB蛍光体調合技術による自然光に近く生体に優しい光のLED照明「CERAPHIC(C)」が点灯することで、快適な目覚めを提供し、脳の活性化を促す世界初の目覚ましシステム。
一般的に、睡眠と日中の活動は互いに影響し合っていると言われている。また、最近の脳科学の研究では、前頭葉が活性化するほど頭が冴えて高いパフォーマンスを発揮できるとともに、人に優しくできるなど、感情をコントロールしやすいということも言われている。そこで、ダイキンと京セラは、良い「目覚め」は健やかな日中の活動と夜の安眠につながると考え、起床直後から脳が活性化し高いパフォーマンスを発揮できるようなシステムを目指し、2020年9月から共同研究を開始している。
国立大学法人東北大学加齢医学研究所とも共同研究を実施し、同システムと一般の目覚まし時計との比較実験を実施。その結果、起床時における「脳の活性度」と「快適さ」の効果の確認も行っている。
今後両社は「市場のニーズを見ながらシステムの実用化に向けて検討するとともに、今回の共同研究で得た知見や経験を活かし、各社でのさらなる商品開発につなげていく」としている。
ユカイ工学はBOCCOの新タイプを出展
スマートホームの新たなハブに
ロボットメーカーのユカイ工学は、10月18日から提案を開始した「BOCCO emo APIs」(ボッコ エモ エーピーアイズ)を出展した。BOCCO emo APIsはコミュニケーションロボット「BOCCO emo」(ボッコ エモ)」を、他サービスと連携できるAPIだ。
BOCCO emo(ボッコ エモ)は、音声メッセージの送受信、センサー連携、天気配信やリマインド機能、IoT機器との連動などを行える。加えて、今回の「BOCCO emo APIs」の活用により、BOCCO emoが専用アプリ以外の既存デバイスやシステムとも連携できるようになった。例えば、既存の遠隔医療の対話システムを連携させることで、ユーザーはBOCCO emoを通じて、医療従事者と対話できる。さらに、住宅内に設置したIoT体重計、IoT血圧計とBOCCO emoを連携させれば、医療従事者は患者の生活データを自動的に取得でき、データを見ながら健康管理のアドバイスや服薬指導なども行える。
音声を通じて、様々なサービスとつながる“スマートホームのハブ〞という点では、「Amazon Echo」と「Google Home」とも似ているが、「かわいらしいキャラクターデザインで興味を喚起しやすくする」「設定が簡単で利用者のITリテラシーを問わない」といったことが異なるとしている。たしかに、既存のスマートスピーカーの外観はあくまで「スピーカー」であるのに対し、BOCCO emoは老若男女に愛される非常にかわいらしい見た目をしており愛着がわきそうだ。そういった点では、既存のスマートスピーカーでは獲得できなかった新たな消費者に対して、スマートホームを提案できる機会の創出につながるかもしれない。
50年脱炭素へ革新的技術の導入は必須
コロナでスマートホームの進化も加速
今回のCEATECにおいて住宅関連では、「カーボンニュートラル」と「スマートホーム」に関する提案が特に目立った。
「カーボンニュートラル」については、2050年のCO2排出量ゼロは非常に高い目標なだけにこれまでの延長線上では実現は難しいだろう。今回出展された新型太陽光発電、新型蓄電池、AIを活用したエネルギーマネージメントシステムなど、開発中のものも含め、最新テクノロジーのさらなる発展と住宅への導入が一層重要になりそうだ。「スマートホーム」については、コロナ禍で住環境をより快適で便利なものにしたいといったニーズが高まっている。そのなかで、テクノロジーがこうした点に貢献する部分は大きいだけに、今後もコロナ禍の巣ごもり需要を通じて、スマートホームを進化させる取り組みはさらに加速しそうだ。
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