木造建築推進の先にある未来とは 改正木促法、識者はこう見る
法政大学 デザイン工学部建築学科 教授 網野禎昭 氏/東京大学 生産技術研究所 教授 腰原幹雄 氏
2021年10月1日、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用促進に関する法律」が施行された。
2010年10月に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(以下、木促法)」が施行されてから10年以上が経つのを契機に、公共建築物から建築物一般に拡大し、広く民間建築も含めて木材利用、木造化を促進する。
木造建築物の設計・施工に係る先進的技術や、強度などに優れた建築用木材の製造技術の開発・普及を目指す。
改正木促法により何が変わり、何が期待できるのか。留意しなければならないことは何か。
法政大学 デザイン工学部建築学科の網野禎昭教授と、東京大学 生産技術研究の腰原幹雄教授に聞いた。
生活者巻き込みビジョン共有する議論を
分散化、多様化、個別化が鍵
法政大学の網野教授は、かねてから「木造建築と社会の持続的関係の重要性」について指摘してきた。
今回の木促法改正についても、「なぜ木造建築なのか。国民的な議論が足りていない」と指摘する。
──改正木促法で何が変わっていくのでしょうか。
新しい法律ができると、世の中が大きく変わっていく契機になります。脱炭素化を目的として、公共建築に加えて一般建築まで木造化していこう、技術を充実させていこう、供給網を整備していこう、という新しい法律ができたことは良いことですが、関心があるのは、林業関係者、建築関係者、あるいは脱炭素化、SDGsに積極的に取り組む企業関係者だけで、多くの一般の生活者は、そんな法律ができたことを知らない、巻き込まれていないことが気になっています。今盛んに言われている持続可能な社会づくり、脱炭素化についても同じです。生活者にとっては、「上で話が決まり降りてきた」という感じではないでしょうか。巻き込まれている感じがしません。
山の問題、木の問題は、全国民的なテーマです。新しい法律ができたことを一つの契機に、関連産業以外の一般の人たちも巻き込んで広範な議論をして、なるべく多くの人に関心を持ってもらい、一方的な視点の押し付けではなく、ビジョンを共有していくことが必要だと思います。
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