「温熱環境と皮膚疾患」岐阜工業高等専門学校 建築学科 教授 青木哲 氏
暖かい住まいは皮膚疾患の改善に効果 HEAT20 G1レベルで6割がアトピー改善
住まいの温熱環境は皮膚疾患とも関係している。断熱性能が高い住宅ほどアトピー性皮膚炎の改善率は高く、HEAT20 G1レベルの断熱性能の住宅でのアトピー改善率は約6割にもなる。
乾燥による健康被害は2割
室温が下がると乾燥しやすい
──住まいの温熱環境は、皮膚疾患や皮膚の不快感とどのような関係がありますか。
まず、大前提として、皮膚に関連した疾患や不快感を引き起こす大きな要因は”空気の乾燥”です。
秋田県立大学の長谷川兼一教授などの調査によると、乾燥によって何らかの健康被害を受けている人は22.8%に及び、皮膚に関するものは16.6%と他の健康被害に比べて相対的に高い数字となっています。
皮膚が乾燥する要因の一つに室内の温熱環境があります。室温が下がると、空気の飽和水蒸気量が減るため、乾燥しやすくなります。そのため、同じ湿度でも夏よりも冬の方が乾燥します。
また、室温が下がると皮膚の表面温度も下がりますが、これにより皮膚のバリア機能が低下し、乾燥しやすくなります。ポーラ化成工業などの調査によると、皮膚バリア機能の回復率を皮膚表面温度33℃と28℃の場合で比較したところ、回復率は28℃だと24時間後に20%強ですが、33℃ですと40%程度まで倍増します。
こうしたことから、住宅の温熱環境を整えることは、皮膚に関連した疾患や不快感を抑えるうえで重要な要素の一つになります。
特に、高齢者と皮膚疾患患者はバリア機能が低下しているため乾燥しやすく、より温熱環境に配慮した住宅が重要です。近畿大学の手塚正教授などの調査によると、皮膚からの水分の蒸発量を60歳以上と23歳以下で比較すると、60歳以上の方が大きいことが分かっています。皮膚からの水分の蒸発量を60歳以上と23歳以下で比較すると、60歳以上の方が大きいことが分かっており、老人性乾皮症では2.4倍(対象老人比)に、また年齢にかかわらず、アトピー患者では11倍(正常肌部分比)にも高まります。
断熱性向上で皮膚疾患が改善
肌のかゆみにも効果
──具体的に、温熱環境が皮膚疾患の改善などに影響を与えることを示したデータはありますか?
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