「温熱環境と高血圧」自治医科大学 循環器内科学部門教授 苅尾七臣 氏

寒い住宅の高血圧リスク、高齢者と女性でより高い 高齢者は30代の3倍に

住まいの温熱環境と大きく関わるのが血圧だ。冬場の寒い住まいは高血圧のリスクが高まる。自治医科大学 循環器内科学部門の苅尾七臣教授によると、特に高齢者や女性でその傾向は強く、高齢者は30代の約3倍の上昇幅だという。一方で、冬だけでなく夏場の高血圧リスクにも注意が必要であり、対応が求められる。


自治医科大学
循環器内科学部門教授
苅尾七臣 氏

起床時の寒さで血圧上昇
室温10℃下がると脳卒中リスク25%増加

──温熱環境の改善が血圧に与える影響について、どのようなことがわかってきているのでしょうか?

国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進調査事業での(一社)日本サステナブル建築協会の調査を通じ、住まいの温熱環境と血圧の関係について、様々なことがわかってきています。

この調査は、断熱改修を予定する住宅の居住者を対象とし、断熱改修前後で居住者の健康状態がどのように変わったかを検証することを目的に2014年度から実施しているものです。2018年度で実地の調査は終え、2019年度以降は追跡調査を行っています。

改修前の住宅2318軒の4147人、改修後の1303軒の2323人、改修工事を行わなかった住宅143軒の254人のデータを分析しました。

その結果、寒い住まいほど血圧上昇リスクが高くなることが分かりました。

起床時の室温と最高血圧について調べたところ、室温が低いほど最高血圧が高くなる傾向が見られました。

さらに、年齢が高くなるほど傾向は顕著で、30代男性では室温が20℃から10℃になった時の血圧の上昇幅は3.8mmHgですが、80代男性では約3倍の10.2mmHgとなっています。

また、男女で傾向を見て見ると、室温が20℃から10℃に下がった時の血圧の上昇幅は、30代女性が5.3mmHgで、30代男性の3.8mmHgよりも大きくなっています。

一方で、断熱改修前後の血圧の変化についても調査しましたが、断熱改修後、起床時の最高血圧は3.1mmHg低下することが分かりました。

高血圧は脳卒中や心不全、狭心症などの急性疾患になるリスクを引き上げます。調査では、高齢者は室温が10℃下がると血圧は10.2mmHgに高まることが分かりましたが、これだけ血圧が高まれば、例えば脳卒中のリスクは約25%高まります。

血圧については、特に朝の起床時に高くなりやすく、より注意が必要です。

朝は室温が下がっていることに加え、布団から外に出ますので、その際により体感温度で寒く感じます。また、朝は交換神経が活発になりますので、それに伴い血圧も高まります。

こうしたことから、特に寝室で重点的に断熱改修を行うなどし、温熱環境を整える必要があります。

“夏のヒートショック”も
昼と夜の気温差が引き金に


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