「住まいと健康」慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン科教授 伊香賀俊治 氏

血圧、睡眠、疾病などで研究成果相次ぐ

新たな知見が積み重ねられつつある住まいと健康の関係。エビデンスはどこまで蓄積されているのか、今後の重要テーマは何か―慶應義塾大学の伊香賀教授に聞いた。

──近年、住まいの温熱環境と健康に関するエビデンスが急速に蓄積されてきました。

住まいと健康に関する研究はここ10年くらいで取り組みが進みました。国の研究プロジェクトとして体系的に動き始めたのは2014年度にスタートした「スマートウェルネス住宅等推進事業」による調査です。それに先立つ5年ほど前から、研究者が個別に住まいと健康に関する調査を行ってきましたが、この事業により一気に進展したと言っていいでしょう。

「スマートウェルネス住宅等推進事業」では調査委員会(委員長:村上周三・東京大学名誉教授)を立ち上げ、建築、医学の研究者が参加しました。全国の約2000件・4000人を対象に、血圧や活動量、生活習慣や健康状態と、各部屋の温度や湿度などについて調査を行い、これらに基づく研究成果が相次いでまとまりつつあります。

2019年10月に高血圧のテーマで論文が医学雑誌に掲載されました。建築と医学が一緒になって国のプロジェクトとして取り組んだ最初の論文です。以降、2020〜2021年とこの2年間で計9編の論文が発表されました。

研究にはサンプル数が多いことが必要で、要は2000件・4000人というオーダーがなければ論文にはなりません。そのデータを集めるのに手間も時間もかかります。5年間の時間をかけた調査でようやくデータが集まり、それを分析して最初の論文が掲載されたのが2年前と、ようやく研究成果が世に出始めたところです。今後、調査に基づく論文が相次いで発表されるはずです。

──健康についてはさまざまな側面がありますが、まず研究が進んだのは?


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