ストック市場のけん引役になるか 空き家ビジネス

巨大な潜在市場が動き出す

2015年のいわゆる「空家特措法」施行から6年が経過する。
国は大きく利活用と除却の二方面から、制度改正や補助事業などを通じて空き家対策を進めてきた。
発生の抑制や除去などに一定の効果が出ているが、利活用についてはなかなか火がつかなかった。
空き家問題には数多くの課題が横たわる。
今、こうしたその散在した課題を解決するサービスが続々投入されている。
さらに、コロナ禍は空き家市場にとってマーケット拡大のきっかけになる。
テレワークの普及により、多拠点居住や多拠点ワークを行う「場」として空き家に関心が高まっているからだ。
今年3月に閣議決定された住生活基本計画でも、空き家の活用を「新たな日常」に対応した新しい住まい方の実現の1つに挙げている。
また、6月18日に閣議決定された骨太の方針でも空き家について言及。「先進的取組や活用・除却への推進等の支援」などをしながら、既存住宅(ストック)市場の活性化に結び付ける考え方を明確にした。
こうした空き家への関心の高まりを追い風に、いよいよ空き家マーケットの誕生の期待が高まる。
国が掲げる2030年に14兆円のストック市場の実現可能性が見えてきた。

10年後には住宅の3件に1件は空き家

空き家は全国で800万戸以上ある。総務省がまとめた「住宅・土地統計調査」によると、空き家の数は全国で846万戸(2018年時点)。前回調査の5年前に比べ26万戸(3.2%)増えており、総住戸数に占める空き家の割合は13.6%と0.1ポイント上昇した。

2018年までの30年間で空き家はほぼ倍増。今後も空き家は増え続け、野村総合研究所の試算では2033年には1955万戸、3件に1件が空き家になると見込んでいる。

空き家は、貸し出すための一時的な空室などのある「賃貸用の住宅」、売却を目的とした「売却用の住宅」、別荘など「二次的住宅」、「その他の住宅」に分類されている。中でも喫緊の課題とされているのが「その他の住宅」に分類される空き家だ。何ら利用されておらず、”放置空き家”と言い換えることができる。建物は管理されず、枝の越境など近隣トラブルを生むだけでなく、劣化・老朽化が進み倒壊の恐れも発生するなど、周辺住民の安全・安心な暮らしを脅かす大きな地域課題となっているのである。

2033年には「その他住宅」の空き家だけで800万戸に迫る

この「その他の住宅」は、空き家846万戸のうち約4割を占めている。仮に今後も4割のまま推移すると仮定し、野村総研の試算1955万戸を母数に計算すると、2033年には2018年にあった全体の空き家数と同水準に近い数となる。

また、現状では残りの6割が、賃貸用、売却用など目的のある住宅の”一時的”な空き家だが、こうした住宅は「その他の住宅」の予備軍であることを忘れてはならない。賃貸や売却は、借り主、買主があってのこと。2016年に全国宅地建物取引業協会連合会が実施した「空き家所有者に関するアンケート調査」によると、「売却しようとしたが売れない」として空き家を持った人の3割近くが、建物の管理をしていないことが分かった。賃貸でも1割の人が「賃貸しようとしたが借り手が見つからない」ことを理由に管理をしていない。建物の管理をしなくなれば、賃貸や売却のための一時的な空き家は「その他の住宅」予備軍となる。

国の制度整備着々と進む

空き家が大きな社会問題となるなか、国はさまざまな対策を進めてきた。危険な空き家の除却や空き家発生の抑制などある。


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