岐阜県飛騨市が「広葉樹のまちづくり」

広葉樹を生かして地域を豊かに〈上〉

付加価値利用と森づくりを推進

岐阜県飛騨市では、2017年度から市の重要施策のひとつとして「広葉樹のまちづくり」に取り組んでいる。市内に豊富にある広葉樹を木工品や家具、建築など付加価値の高い分野で活用することで産業振興を図るとともに、水や食の豊かさなど広葉樹によってもたらされるメリットを市民が実感できるような関係性づくりを進める。

同市の森林面積は74131haで森林率は93%と非常に高い(別掲図参照)。さらに森林の8割近くを占める民有林については、その7割近くがブナやナラなどの広葉樹林である。ところが、前回紹介した全国動向と同様に、飛騨市でも広葉樹の生産量は少なく、用途もこれまではチップ向けが多くを占めていた。

一方、市内には広葉樹専門の製材業者が1社あり、隣接する高山市を含めた飛騨地域には大手メーカーや個人工房を含めて多くの家具・木工業者が拠点を構えている。こうした利用の受け皿が整っていることを強みとして、市では広葉樹材の付加価値利用に力を入れていく。

ただ、市が民有林の資源調査を実施したところ、広葉樹の資源量自体は豊富にあるものの、全体的に若木が多く、胸高直径(地上から130㎝の高さの直径)が平均26㎝程度しかないことが明らかになった。そのため、市では、さしあたり小径木の有効活用を図りつつ、将来は太くて質の良い木が生産できるように森林の育成に力を入れることにした。

具体的な手法は、将来的に大径まで育てて収穫する木(「将来木」あるいは「育成木」)を定め、周囲の木々との関係を間伐などで調節しながら、その木が健全に育ち、高い品質も備わるように仕立てていくというもので、「将来木施業」あるいは「育成木施業」などと呼ばれる。

実は市では2012年から一昨年まで、毎年スイス人フォレスターを招いて森づくりに関する研修を実施してきた(昨年はコロナ禍の影響で開催せず)。上記の施業方法はその研修で学んだもので、今後はこの手法を可能な限り取り入れながら、広葉樹のまちづくりを実現するための「森づくり」を進めていく。

多彩な取り組みで広葉樹をプロデュース


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