2021.6.14

国土交通省が2025年までの無電柱化推進計画を策定

国土強靭化対策とあわせ約4000kmに着手

2021~2025年の無電柱化計画がまとまった。防災や景観形成などを目的に約1600㎞に着手する。その実現に向けコスト縮減が大きなテーマだ。


国土交通省が「無電柱化の推進に関する法律」に規定する「無電柱化推進計画」を策定した。
わが国において、これまで無電柱化は、防災性の向上、安全性・快適性の確保、良好な景観形成の観点から取り組みが進んできた。しかし、全国には依然として約3600万本の電柱が建っており、減少どころか増加している。この水準は欧米どころかアジアの主要都市と比べても大きく立ち遅れているという。

そこで無電柱化を強く進めるため、2016年に「無電柱化の推進に関する法律」が制定され、同法に基づき平成30年に「無電柱化推進計画」が策定、2018~2020年の3年間で約1400kmの無電柱化を目標に掲げた。さらに近年、台風や豪雨などの災害において倒木や飛来物などによって電柱が倒壊し、停電や通信障害が長期間にわたって発生していることを踏まえ、2020年に「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が閣議決定され、電柱倒壊のリスクがある市街地などの緊急輸送道路の無電柱化が進められている。

ただ、無電柱化は加速しているとは言い難い状況にある。2020年末までに着手された無電柱化は約1万1700kmであるが、2018~2020年の3年間の目標である2400km(無電柱化推進計画1400km、重要インフラ緊急点検1000km)は未達成だ。

こうしたなかで策定された新たな「無電柱化推進計画」は、前計画での成果や課題を踏まえたもので、2021~2025年の5か年計画となっている。

防災、安全など3道路を対象
必要性の高いところを重点的に

年度ごとの無電柱化延長(着手ベース)

同計画では、大きく、①防災、②安全・円滑な交通確保、③景観形成・観光振興――という3つの道路を対象に重点的に無電柱化を推進する。やみくもに実施延長という数字を求めるのではなく、無電柱化の必要性の高い区間から重点的に進める考えだ。

「防災」は、電柱倒壊リスクがある市街地等の緊急輸送道路の無電柱化着手率を、2019年度末の38%から2025年に52%へ、「安全・円滑」は、特定道路における無電柱化着手率を同31%から38%とした。また、「景観形成・観光振興」については、世界文化遺産周辺の無電柱化着手率を2020年度末37地区から67地区などの目標を掲げた。

これらの目標を達成するには約1600kmの無電柱化着手が必要で、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」で着手する約2400kmとあわせると約4000kmに達する。2020年までに無電柱化に着手した無電柱化は約1万1700kmであり、ハードルは高い。

このため、国土交通省では、大きく「緊急輸送道路の電柱を減少」、「新設電柱の抑制」、「コスト縮減の推進」、「事業のスピードアップ」、占用制限の的確な運用」、「財政的措置」、「メンテナンス・点検及び維持管理」、関係者間の連携の強化」、という幅広い施策を展開していく。

最大の課題はコスト
2025年までに2割縮減を目指す

展開する施策のなかで特に重要となるのが「コスト縮減の推進」だ。これまで急速な拡大には至らない要因と、国土交通省は「最も大きな要因がコスト」(道路局 環境安全・防災課)と指摘する。

このため計画、設計、工事などの各段階において取り組みを進め、2025年までに平均して約2割のコスト縮減を目指す。具体的には、効率的な無電柱化を推進するため地中化以外の手法、例えば軒下配線や裏配線も含め、地域の協力を得て推進。また、低コスト手法について設計要領や仕様書、積算基準などに盛り込んで標準化を図る。そのほか、機器のコンパクト化や低コスト化技術の開発を促進、新技術・新工法の活用などにも取り組む考えだ。

同計画では、まちづくりの総合的な計画においても無電柱化を位置づけ、地域の賑わいを創出するような道路空間を整備していくとする。さらに、この無電柱化を実施する機会に、舗装や照明、防護柵、街路樹などのデザインの刷新、また、自転車通行空間の確保やグリーンインフラの導入など「道路空間のリデザイン」を推進していくとした。

無電柱化は、防災の視点は言うに及ばず、景観形成の役割も大きい。街づくりにおいて、その価値を高める一つの手法ともなる。今後、地域開発の場においても、その取り組みが期待される。

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特集:

巨大な潜在市場が動き出す

2015年のいわゆる「空家特措法」施行から6年が経過する。
国は大きく利活用と除却の二方面から、制度改正や補助事業などを通じて空き家対策を進めてきた。
発生の抑制や除去などに一定の効果が出ているが、利活用についてはなかなか火がつかなかった。
空き家問題には数多くの課題が横たわる。
今、こうしたその散在した課題を解決するサービスが続々投入されている。
さらに、コロナ禍は空き家市場にとってマーケット拡大のきっかけになる。
テレワークの普及により、多拠点居住や多拠点ワークを行う「場」として空き家に関心が高まっているからだ。
今年3月に閣議決定された住生活基本計画でも、空き家の活用を「新たな日常」に対応した新しい住まい方の実現の1つに挙げている。
また、6月18日に閣議決定された骨太の方針でも空き家について言及。
「先進的取組や活用・除却への推進等の支援」などをしながら、既存住宅(ストック)市場の活性化に結び付ける考え方を明確にした。
こうした空き家への関心の高まりを追い風に、いよいよ空き家マーケットの誕生の期待が高まる。
国が掲げる2030年に14兆円のストック市場の実現可能性が見えてきた。

目次

HTʼs eyes

土石流が人災であったとしても
大規模盛土造成地の点検スピードアップを

ストック市場のけん引役になるか
空き家ビジネス
巨大な潜在市場が動き出す

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CLOSE UP

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