どうなる2021年の住宅マーケット④
省エネ住宅市場 / 不動産テック市場 / 中大規模木造市場 / 国産材活用市場
2021年の幕が上がった。
コロナ一色であったといっていい2020年を経て、新たな年はどのような一年になるのだろうか。
人口減少、少子・高齢化、環境対策への強い要請など社会的な環境変化に加え、新型コロナウイルスの蔓延は住生活産業に劇的な変化を促そうとしている。
新設住宅着工はいよいよ70万戸時代に突入しそうで、新築をベースとした市場はその姿を大きく変えつつあり、既存住宅の取引量が増大している。
また、東京一極集中にストップがかかり、郊外への移住が顕在化し始めた。
一方、環境対策や自然災害対策などにより、省エネや耐震など住宅の性能向上はこれまで以上に強く求められそうだ。
特に空き家問題も踏まえ、既存住宅の利活用、更新が大きな課題となっている。
戸建からマンション、既存住宅流通、移住住替え、省エネや災害対策など、成長の鍵はどこにあるのか──。
【省エネ住宅市場】省エネ住宅をめぐる環境が次のステージへ 説明義務化スタート、ZEH目標も達成の見込み
2021年は、住宅の省エネ化にさらに加速がつきそうだ。
2050年カーボンニュートラル実現を目指し、省エネをめぐる環境が大きく変わろうとしている。
2020年11月、菅総理大臣がG20サミットで「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す」と宣言した。深刻さを増し、待ったなしの地球環境問題への対策がさらに加速することは間違いない。住宅の省エネ化への取り組みもがこれまで以上に強く求められよう。
先にまとめられた緊急経済対策「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」でも柱の一つとして「グリーン社会の実現」が掲げられ、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けたカギを「革新的なイノベーション」とし、再生可能エネルギー等に関する規制の大幅緩和など必要な制度整備を検討するとした。住宅関連では「既存住宅における断熱リフォーム・ZEH化支援事業」、「グリーン住宅ポイント制度」、「省エネ性能の高い木造住宅等の普及促進」などを打ち出している。特にグリーン住宅ポイント制度は、省エネ性に優れた住宅の購入に対し、最大100万ポイントを付与と、住宅需要の喚起だけでなく、省エネ性向上にも大きなインパクトがあると期待されている。
加えて、2021年4月に省エネ基準適合に関する説明義務制度がスタートする。延べ床面積300㎡未満の住宅の新築、増築、改築について、建築士に説明を求めるもの。省エネ基準への適合の可否、つまり〇×を説明するだけではなく、不適合の場合でも、どうすれば適合するかを具体的に示さなければならない。つまり、これまでのような住宅事業者が省エネ基準を知らない、また計算ができないなどの理由が通らなくなり、省エネ計算が必須に求められる時代に入るということだ。
2021年は、省エネ住宅をめぐる国の制度が大きく動く一年といえる。
ボトムアップが必須
トップランナーの取り組みも加速
2018年の国土交通省「住宅・建築物のエネルギー消性能の実態等に関する研究会」のデータによると、2015年度時点の省エネ基準適合率は小規模戸建住宅で53%、小規模共同住宅で46%にとどまっている。内訳をみると、年間着工戸数4戸以下の中小事業者が供給する戸建住宅の適合率は39%と平均を大きく下回っている。今後、このボトムアップをどう進めていくかが重要なポイントといえる。
その一方で、省エネ基準を上回る高い性能を持つ住宅への取り組みは着実に広がっている。ZEHやHEAT20のG2といったレベルだ。例えば、(一社)環境共創イニシアチブがまとめた2019年度のZEHの供給戸数は5万9648戸と、新設住宅着工戸数の13.9%を占めるまでに増えている(図1)。特に注文住宅は5万7741戸とその多くを占めている。こうした拡大を担っているのが大手ハウスメーカーで4万1784戸と全体の70%を占めている。国は「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上でZEHを実現」という目標を立てているが、2019年の普及率は47.5%と、目標は達成しそうだ(図2)。少なくとも省エネ基準を満たす住宅づくりを進める一方で、こうしたトップランナーの広がりを加速していくことも省エネ住宅の広がりの大きなポイントといえる。
例えば、住友林業は2020年に戸建注文住宅における「360°TRIPLE断熱」標準採用の取り組みを開始した。UA値0.41とZEH+を上回る性能だ。(一社)プレハブ建築協会によると、2019年度の会員各社の注文戸建住宅におけるZEH供給率は61.8%、強化外皮基準適合率は8割を超える。2021年もこうした取り組みはさらに加速しそうだ。
既存の省エネ性向上が大きな課題に
住宅の省エネ化で大きな課題といえるのが既存住宅の対策である。既存住宅5300万戸のうち省エネ基準を満たしていない住宅は2200万戸にのぼる。「このままでは次の世代に安心して住宅を譲り渡すことはできない」(阿部俊則・住宅生産団体連合会会長)と、これら既存住宅の性能を上げる、もしくは性能の高い住宅に置き換えるなどの取り組みが不可欠だ。さらに言うなら、新築住宅市場の縮小が進み、いよいよ新設住宅着工70万戸時代を迎えようとしているが、環境時代に求められる住まいという視点で見れば、まだ、これだけのマーケットが存在するということでもある。
リフォーム需要の調査をみると、修理・修繕などがメインであり、性能向上リフォームが急拡大しているわけではない。しかし、(一財)住まいづくりナビセンターがリフォーム評価ナビ利用者を対象に行ったアンケートによると「省エネリフォーム」の実施者は11.6%しかいないが、省エネリフォームの実施意向は4割弱と潜在需要は決して少なくはない(図3)。YKK APが地域のビルダーなどと協働で中古戸建住宅に性能向上リノベーションを実施する「戸建て性能向上リノベーション実証プロジェクト」を2017年から展開するなど、建材メーカーでも性能向上リノベーションに対する取り組みが活発化している。
新築、既存を問わず省エネ性能を上げるためにはコストがかかることからユーザーの理解を得ること、プラスαの費用を納得してもらうだけの提案が不可欠だ。その面からは断熱性の高い家が健康によいというエビデンスが積み上げられてきている。また、国土交通省では消費者の関心を高めていくことを目的に「光熱費換算値」の表示を導入する考えだ。
コロナ禍に”新たな暮らし”の姿が模索されるが、そのベースとなるのは省エネを始めとする住宅の基本的な性能の向上であろう。2021年、省エネをめぐる動きが加速することは間違いない。
【不動産テック市場】業務支援系のテックサービスが普及 21年はさらに市場拡大へ
不動産テック市場は、コロナ禍でのオンライン営業ニーズの高まりなどにより、業務支援系サービスの普及が進んでいる。
2021年は、国の後押しなどもあり、こうした流れが一層拡大していきそうだ。
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