一般向けの住まいで商店街の2階を蘇らせる 客付け、リノベ、管理で活用の道筋、家賃保証まで

case10. 静岡県熱海市②

静岡県熱海市。熱海駅から15分の熱海銀座では、商店街の2階の空きスペースを居住空間にリノベーションし、町一体が暮らしの場になるという、新たな町づくりが実施されている。

商店街の2階の空き空間をリノベーションでゲストハウスにしオープンのセミナー。大家、設計家、起業家などが参加しノウハウを連携する形で開催された

町で働く若い人たちのために、どんな空間が欲しいか話を聞き、それにあわせて改装をしていくというカスタマイズのスタイル。それによって住みたい人が快適に過ごせるというわけだ。しかも部屋を町全体に連携させていくという斬新な試み。つまり、商店街に直結していることから食事から買い物までがすぐできる。商店街の2階の空いた部屋を再生したゲストハウスやコワーキングスペースもあり、打ち合わせの会議もできるし、知り合いが来ても泊めることができる。飲食店では懇親会も可能だ。温泉地でもあるので、すぐ近くの温泉でくつろぐこともできるし、浜辺も近く散策もできるというわけだ。町全体が居住空間というコンセプトだ。

新幹線で東京まではわずか46分。2拠点居住も可能だ。すでに4部屋が生まれ、さらに新しい部屋が3部屋できる。広さは1K、2Kのワンルーム。家賃は5万円から8万円だ。

部屋はシンプルで窓も大きくとってあり外も一望できる。それぞれの部屋が個性的だ。

実は、熱海市の空き家率は50.7%。1965年が人口のピークで5万4540人だったのが、2020年は3万573人まで減っている。65歳以上の高齢化率も44.7%と高い。

温泉街として栄え、高度成長期にはホテルや旅館や大手企業の保養所なども多くあったがバブル崩壊とともに激減し人も減って、使われないホテルや商店なども増えた。

商店街の2階の空きスペースを使った住まい。住居者の要望を入れてリノベーションを行う

だが利便性もよいこともあり住みたいという人も多い。しかしリゾートマンションはあるものの価格が高い。一般向けの住まいが少なかった。そんなことから暮らしに根差した商店街の2階の空きスペース居住空間への展開が始まった。

手掛けたのは、リノベーションを軸に熱海の地域づくりを手掛けてきた株式会社machimoriの代表・市来広一郎さんだ。

市来さんは、2019年新たに「マチモリ不動産」を新設。代表取締役は三好明さん。東京都内の不動産管理会社に勤めながら熱海の町づくりに関わり2015年に移住。machimoriの取締役として活動してきた。

DIYで57年間空きスペースだった商店街の2階を改装したコワーキングスペース

三好さんは高校のときカリフォルニアへの留学経験がある。向こうの住まいが居住空間も周辺も広々として環境のよいことを経験した。日本では部屋が狭い。しかし市来さんたちとの活動で、町全体を居住空間にしていき、外に集う場やワーキングスペースを創るという展開に共鳴したのだという。

「もともとちゃんと住む場所をつくっていかないといけないという思いはありました。住まいに関して熱海は弱い。なかなかいい住宅がみつからない。その問題が大きいので、マチモリ不動産を創り、商店街の空いているところを住宅にするというのを取り組んできました。これまでリノベーションしてデザインをするというのがなかった」と市来さん。

市来さんたちは、これまで熱海銀座の商店をリノベーションしてシェア店舗やゲストハウスなどを手掛け、また町を周遊して連携し熱海全体を体験し魅力を再発見するツアーや、創業を支援するワークショップの活動などを行ってきた。そこから熱海銀座の10店の空き店舗がすべて埋まり活用されることとなった。これらの実績から、地域の大家さんや不動産関係者の信頼関係が生まれ、空いた物件を活用したいという相談が増えた。また数々のワークショップを手掛けたことで若い人が集まり起業する人たちやゲストハウスで泊まった人から住みたいという声も多く寄せられるようになった。

しかし大家さんたちも、空き家が増えているなかで、あえて投資をしてまで部屋を貸そうという人はいなかった。そこから住みたいという人の客付けを行い、リノベーションの工事や管理を引き受け、活用の道筋をつけ家賃を保証することで商店街の2階を蘇らせた。

「客付けまでをすることで何年間か家賃が保証されれば、その分は出してもいいとなった。熱海ではオーナーさんが投資するという例はなかったんです」と市来さん。

若い人が移住して起業する人や、テレワークの進展で2拠点居住をする人も増えていることから、熱海の活動は、さらに広がっていくことだろう。

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