タワマン電源設備の浸水対策で指針
水害時のライフライン確保へ検討開始
国土交通省と経済産業省は共同で、タワーマンションの電源設備への浸水を防ぐための対策でガイドラインを策定する。11月27日、有識者検討会を立ち上げ、検討を開始した。
台風19号により神奈川県川崎市武蔵小杉のタワーマンションで地下の電源設備が浸水被害に遭い、居住者のライフラインに大きな影響を与えた。電源設備が水没し停電したことで、エレベーターが稼働しなくなり高層階の居住者は移動に大きな不便をもたらした。また、給水ポンプが停止したことで断水し、トイレが使えないなどの問題を引き起こした。
武蔵小杉の事例と同様に、共用部・専有部の設備を動かすための電源設備が地下に設置されているマンションは多い。このため、国土交通省と経済産業省は「建築物における電気設備の浸水対策のあり方に関する検討会」(座長:中埜良昭 東京大学生産技術研究所教授)を設置、マンションの電源設備の浸水を防ぐためのガイドラインを策定する。
2020年3月をめどに取りまとめを行い、同年春から業界団体等を通じて不動産デベロッパーや建設事業者、マンション管理組合等に広く周知を図りたい考えだ。
ガイドラインの対象とするのは、高圧で電力を供給し、高圧受電設備の設置が必要となる新築・既存の高層マンション。また、マンション以外でも電源設備への浸水が懸念されるため、同様の設備を必要とするオフィスビル等の建築物も対象とする。
ガイドラインに盛り込むことを検討している浸水対策は、大きく2つ。一つは、建築物への浸水を防止するための取り組み。例えば、止水板の設置やマウンドアップ(盛り土)などだ。もう一つは、仮に建築物への浸水があったとしても、電源設備への浸水を防ぐための取り組み。電源設備を浸水の恐れのない上階に設置することや水密扉の設置による防水区画の形成などを想定している。
また、併せて、非常用電源の確保、浸水した電源設備の早期復旧に関する留意事項も浸水対策として盛り込む。
このほか、電源設備への浸水対策の先進事例を収集し、ガイドラインの付属資料として取りまとめる予定だ。
ガイドラインに法的な強制力はなく、あくまで注意喚起や啓発にとどまる。だが、台風19号でタワーマンションの電源設備への浸水による生活被害が社会的に大きな注目を集めただけに、ガイドラインをきっかけに対策に取り組む機運が醸成されそうだ。
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