国産材合板が増加 生産流通の構造変化が進行(上)

利用期を迎える国林野庁の国産材合板推進策が奏功

本シリーズの初回に触れたように、国産材の生産量が増加し、自給率が上昇基調となった主な要因として、国内の合板メーカーが国産材利用に大きく舵を切ったことが挙げられる。その背景には、2000年代初めまで国産合板の主要な原料であったロシア産カラマツの輸入量が、同国の丸太輸出関税引き上げ措置によって激減したことがあるわけだが、同じ時期に国が合板メーカーの国産材利用を支援したことと、国産材を利用しやすい厚物合板の需要が増加していたことも合板の国産材化を後押しすることになった。

林野庁は2004~06年度に「国産材新流通・加工システム」(新流通システム)を実施した。この事業は、曲がりなどの欠点がある、いわゆるB材を合板や集成材に利用することを目指したもので、合板に関しては、国産材利用を進めるための設備投資に公的補助金が投じられた。

国内の合板メーカーは、この事業を活用して、直径14㎝程度の小径丸太でも単板(合板の原料になる薄板=ベニヤ)に剥くことができるロータリーレースや含水率の高いスギを効率良く利用するためのドライヤー、スギやヒノキの強固な樹皮に対応したバーカー(皮剥き機)といった設備を次々と導入した。

ロシア政府が丸太輸出関税を引き上げる方針を発表したのは、そうした動きのさなかであり、最初の関税引き上げは2007年1月から実施された(6.5%→20%。翌2008年にはさらに25%に引き上げ)。これを受けて、すでに国産材を利用するための基盤を整えていたメーカー各社は、国産のカラマツやスギ、ヒノキへのシフトを急速に進めた。

耐震工法の普及も国産材利用に追い風

需要面では、阪神淡路大震災後、木造建物の耐震性を高めるために剛床が普及していたことが国産材の利用を後押しした。剛床とは、24mmあるいは28mmの厚物合板を土台や大引き、床梁といった構造躯体に直接打ち付けて一体化したもので、水平構面の構造耐力を高める効果がある。震災以降、多くのハウスメーカーやビルダーがこの工法を採用したことにより、厚物合板は国内メーカーの主力製品のひとつとして定着していた。そのことが国産材を利用する上でプラスに働いたのである。


この記事は会員限定記事です。
無料会員になると続きをお読みいただけます。

アカウントをお持ちの方

ご登録いただいた文字列と異なったパスワードが連続で入力された場合、一定時間ログインやご登録の操作ができなくなります。時間をおいて再度お試しください。