国交省、住生活基本計画(全国計画)の見直し議論開始
まちづくり、外国人材への対応など論点に
国土交通省は9月12日、中長期的な国の住宅政策などの方向性を定める住生活基本計画(全国計画)の見直し議論を始めた。現行計画で挙げられている、既存住宅の活用や空き家対策、出生率向上につなげる子育て世帯への対応などに加え、AI・IoTなどの新技術が与える影響も議論。人手不足から建設業などでの増加が見込まれる外国人材への対応や住宅確保など新たな論点についても話し合う。
同省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会(分科会長・中井検裕 東京工業大学環境・社会理工学院長)で議論。2020年6月に中間とりまとめを行い、21年3月の閣議決定を目指す。
住生活基本計画は、住生活基本法の理念を具体化するため策定される中長期計画。法律では、国と都道府県に計画策定を義務付けており、その中で国が策定するものが「全国計画」で、計画期間は10年だが、おおむね5年毎に見直している。現行の計画は16年3月に閣議決定された。
この日、同省は論点となるたたき台を示した。総論では、住生活を巡る状況変化や、住宅市場が適正に機能しているか、住まい手のニーズの変化などが論点に。各論では、現行の計画で示された「居住者からの視点」と「住宅ストックからの視点」、「産業・地域からの視点」という3つの視点から、産業と地域を分け、「産業・新技術からの視点」、「まちづくりからの視点」の4つの論点をそれぞれ挙げた。
全般的には現行計画で掲げた目標実現に向けた論点が目立った。住宅ストックからの視点では、現状の流通シェアが14%にとどまる既存住宅への対策や空き家の発生抑制などを含めた取り組みが論点に。耐震や省エネ、バリアフリーといった住宅が備えるべき機能確保やマンションの老朽化問題にも触れている。居住者からの視点では、子育て世帯へのニーズや、高齢者が安心して暮らせる住まいの実現など。
産業・新技術からの視点では、職人不足の緩和につながる外国人材の確保や、AI・IoT、自動運転、MaaSなどの新技術が、住宅や住宅地、住宅産業にどのような影響を与えるかといった前回の計画策定後に浮上した論点も盛り込まれている。外国人材の増加による住宅確保は居住者からの視点で論点に挙げられている。まちづくりからの視点では、コンパクトシティ、都市のスポンジ化対策などのまちづくり政策と住宅政策の連携が論点に。昨今の災害の激甚化・多頻度化を踏まえた住宅政策や関連する他の政策分野での発災時の対応なども論点に挙がっている。
この全国計画を踏まえ、都道府県は地域の実情も加味し、住生活基本計画を策定する。会合に出席した委員から「空き家と言っても都会のマンションと地方とでは発生理由が違う」など、一律の住宅政策のあり方に疑問を投げかける意見もあった。
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