里山住宅博 ㏌ TSUKUBA モデルハウス完成、公開で本格始動
工務店の“営業姿勢”に変化も
戸建分譲で地域工務店が住宅を供給する「里山住宅博 ㏌ TSUKUBA」(茨城県つくば市)が本格的に始動した。規模や予算の問題から住宅展示場の出展が難しい地域工務店の取組みに全国から注目が集まる。
「これからの地域工務店の生き残り方法として、とても参考になる」。7月上旬、愛知県から里山住宅博の視察に訪れた工務店で住宅販売を担当する男性は、興奮気味に語った。無理もない。普段、注文住宅を手掛ける工務店の特色ある家々が、興味をかきたてているからだ。観光バスから、カメラをぶら下げた視察者が続々と。行列のできる住宅もあるなど、里山住宅博への関心は高い。
この里山住宅博の舞台となるのは「つくば 春風台ヒュッゲガーデン」。土地は地元のデベロッパーであるサンヨーホームが保有。75 区画ある分譲地を、建築条件付き土地として同社が分譲する。里山博に参加する21 社は同社から土地を買い、茨城県産材や自然素材を多用したモデルハウスを建設、公開を始めている。建設されたモデルハウスは23 棟。気に入った客がいれば、75 区画ある分譲地内に建物を建築するという流れだ。これにより、これまで1社単独では容易でなかったモデルハウスの開設や分譲事業を可能にする。
里山住宅博による工務店への効果はそれだけにとどまらない。工務店の営業に対する意識も変えつつある。というのも、モデルハウスといえど住宅博終了時には客へ住宅を販売するため、売れ残れば在庫となって経営を圧迫するためだ。
里山住宅博にモデルハウスを建てた篠屋木材工業(つくば市)の鬼澤一浩専務は「これまで注文住宅をやってきた。このモデルルームは建売住宅と同じで、お客さんに住宅の価値を伝えるのが難しい」と話す。菊池工務店(土浦市)の鈴木卓代表は「昔ながらの工務店なので、営業は手探り状態だが、この住宅博に参加したことで横のつながりができ、営業ノウハウなどで教わることもあり、大変勉強になる」と強調する。また、協同組合いばらき大工棟梁の会の石坂健一さんは「これまでの自分のパターンにならないよう、設計士としっかり相談しながら、モデルルームを建てた」と話すなど、参加工務店に変化をもたらしている。
里山住宅博は、つくば市の前に神戸でも開催されており、町の工務店ネットの小池一三代表理事がプロデュースしている。「つくば春風台ヒュッゲガーデン」の特徴は、こうした地域工務店の新たな取組み以外にも、コミュニティー形成の場として街区内にコモンエリアを設けたり、街区の周辺部にある斜面地に緑化を施し、里山のなかでの暮らしを演出したりしている。そして、新たに用途地域に追加された「田園住居地域」のモデル的なプロジェクトになることも目指しているという。
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