2019.5.10

ウッドファイバー、木質繊維断熱材の生産・販売を強化

断熱性能+αの多機能建材として訴求

ナイスグループのウッドファイバーは、木質繊維断熱材の生産・販売を強化する。優れた蓄熱性能、調湿性能、吸音性能などを発揮する多機能建材として訴求し、普及拡大を目指す。

ナイスは2017年に、国内唯一の木質繊維断熱材メーカーの事業を継承し、社名を「ウッドファイバー」(日暮清代表取締役、北海道苫小牧市)に変更、木質繊維断熱材「ウッドファイバー」の生産・販売の拡大に乗り出している。

ウッドファイバーの特長として、まず挙げられるのは環境性能だ。主原料は、カラマツやトドマツなどの北海道産針葉樹で、森林資源を無駄なく有効活用する。また、化石燃料に極力依存しない省エネルギー生産を実現し、CO2削減に寄与する。また、青森県、栃木県、埼玉県、岐阜県、奈良県など、地域の木材関連事業者や工務店などと連携して、地域の木材をウッドファイバーの原料として使用してOEM生産する取り組みも進める。地域の木材を有効活用することで、地域の林業、木材産業の振興支援にもつながる。さらに、住む人にも、建てる人にも安全・安心な断熱材としても定評がある。持続可能な資源である木材を主原料としたSDGsを体現する断熱材であり、ホルムアルデヒドやVOCフリーでシックハウス・アレルギー対策にも貢献する。

性能面でも様々なメリットをもたらす。ウッドファイバーの熱伝導率は0.040W/mK。一般的な繊維系断熱材に劣らない断熱性能を備えている。

特筆すべきは蓄熱性能だ。グラスウール断熱材と比較して約7倍という優れた蓄熱性能により急激に出入りする熱をダムのように貯め込み、緩衝機能として働くことで家の中の温度変化を抑制し、結果として快適性の向上に寄与する。とくに冬の寒い環境下において、その蓄熱性能が十二分に発揮される。同社では、ウッドファイバーと輻射式暖房とを組み合わせることを推奨。輻射式暖房によりウッドファイバーの入った壁が暖められると、壁に蓄積された熱が放出され、じんわりとした暖かさが持続する効果が期待できる。一方で、夏には、その蓄熱性能により日射熱をため込み、室温上昇を招くことが懸念されるが、庇やアウターシェードなどで開口部から入る日差しをうまく遮ることで、最小限の冷房設備で快適な室温に保つことができるという。

また、吸放湿性能が高いといわれるセルロースファイバーや羊毛よりも高い吸放湿性能を発揮し、壁体内の結露の発生を抑制し、室内の湿度環境を快適に保つ効果も期待できる。繊維系断熱材で多孔質材料のウッドファイバーは、吸音性にも優れている。生活音を軽減し、音環境という点でも住空間の快適性を向上する。さらに、木質繊維にリン窒素系難燃剤を添加することで高い防火性能も発揮。万が一燃えても、表面が炭化するだけで、内部にまで燃え広がる心配はない。そのほか、ホウ酸を添加することで、カビの発生を抑制するほか、シロアリ、ゴキブリなどに対して高い忌避効果を発揮し、優れた耐久性も付与した。

ウッドファイバーの主原料には、カラマツやトドマツなどの北海道産針葉樹を使用。国産材の有効活用にも寄与する

壁体内の温熱シミュレーションで心地よさのメカニズム解明へ

ウッドファイバーでは、様々な特徴を備えた木質繊維断熱材の拡販に向けて、科学的なエビデンスを解明するための実証実験も進めている。2017年から京都大学大学院農学研究科の藤井義久教授と共同で2棟の試験棟を建設し、ウッドファイバーを施工した場合とグラスウール断熱材を施工した場合の住空間の温度、湿度をモニタリングする試験を実施した。その結果、ウッドファイバーを使用した住空間は、外気の温度、湿度の影響を受けにくく、空気温熱環境が安定していることが分かった。

現在進めているのは、ドイツのフランホーファー建築物理研究所が開発した湿度温度非定常同時解析ソフト「WUFI」を用いた検証だ。これは多層構造の建築部位の中の温度と湿度の挙動を、入力した気象条件の下でシミュレーションできるソフト。試験棟での実測データを用いてWUFIによるシミュレーションの信頼性の検証を進めている。こうした検証のもとに、様々な気象条件の下でウッドファイバーを用いた壁体内の温度・湿度変化のシミュレーションを行い、地域ごとに最適な仕様を提示していこうとしている。

また、実証実験では冬期において壁内の室内側の温度がグラスファイバー断熱材より2℃程度高くなることも分かってきた。木質繊維の吸着熱や蓄熱性能などが関与していると推測される。

ウッドファイバーの福田健作常務取締役は、「ウッドファイバーを住空間の快適性向上に寄与する様々な機能を持つ多機能建材として訴求していきたい。今まではこの性能にこだわる一部の設計事務所や工務店に限られていたが、丁寧に快適な住まいづくりに取り組む住宅事業者からの支持も増え始めている。まずは、そうした住宅事業者に向けて完成後の暮らし方までを含めた提案を強化していきたい」と話す。