2018.9.27

飛島建設、住友林業、ミサワホーム 木材を用いた地盤補強工法を開発

住宅、中大規模木造分野を開拓

飛島建設、住友林業、ミサワホームの3社は、木材を用いた地盤補強工法を開発し、(一財)日本建築センターから木材を用いた地盤改良工法として初の評定を取得した。より使いやすく改良を加え、2019年度の実用化を目指し、木材資源を有効活用する地盤補強工法として、住宅に加えて中大規模木造分野の開拓を進める考えだ。


木杭は1950年代頃まで多く使われてきたが、戦前・戦後の森林資源の枯渇、鉱物など地下資源の利用拡大などによりほとんど使われなくなった。一方で、木杭の、鉛直方向の力を支える鉛直支持力は、同形状のコンクリート杭や鋼管杭に比べて一般的に大きいことが知られている。そこで、3社は、新しい軟弱地盤対策工法として木材を活用する「丸太打設軟弱地盤対策&カーボンストック(LP-Soc)工法」の共同開発を進めてきた。

そして今回、(一財)日本建築センター(BCJ)の初の評定を取得した。この評定を活用することで、建築確認申請などの所定の手続きを簡略化できる。3社の役割は、飛島建設が本研究開発計画の立案、進捗などの統括管理を担当、3社で研究開発の実施、実用化の検討を行い、ミサワホームと住友林業がこれまでの経験を活かしてBCJ評定取得対応を担当した。さらに今後、3社では、LP-Soc工法をより使いやすく改良を加えた上で、2019年度の実用化を目指す。

今回、(一財)日本建築センターから取得した評定では、木杭のみの鉛直支持力のみが考慮されている。そこで、地盤の表層土の支持力まで加えられるように、さらに研究開発を進め、必要なデータを集め、評定の追加取得を目指す。これにより、木杭の本数を減らし、工事の手間とコストをさらに削減する効果が期待できる。

LP-Soc工法は、コンクリート杭や鋼管杭に比べて支持力に優れているだけでなく、様々なメリットを有している。

まず挙げられるのは、優れた施工性だ。「容易に切断可能であるため、簡単に改良深さを調整できる」「低振動・低騒音で圧入できる」「残土がほとんど発生しない」「養生が不要なので、工事のスピードアップを図れる」といった様々なメリットをもたらす。また、「木材資源を有効活用し、林業再生、地域林業の活性化に貢献できる」「加工をほとんど必要としない」「自然素材なので地下汚染などの心配がない」といった優れた環境性能も備えている。

大潟湾(八郎潟干拓地)の秋田県立大学敷地内で行ったLP-Soc工法の実証実験の様子
3社は、2019年のLP-Soc工法の実用化を目指し、住宅分野さらには中大規模木造市場の開拓を狙う

木材活用地盤対策研究会が補強工事品質を管理

3社では共同で立ち上げた、「木材活用地盤対策研究会」を通じて、LP-Soc工法の普及を図る。同研究会が指定した企業が、木杭の品質、補強工事の品質を含めた管理を行う。「2019年の実用化後、住宅分野の開拓を進める。さらに将来的には中大規模木造建築分野への提案も強化していきたい」(飛島建設)考えだ。