積水化学工業 FIT終了を踏まえVtoH搭載住宅を深化
実邸調査で課題を浮き彫りにし方向性を明らかに
VtoH搭載住宅の実邸調査結果をまとめた。EVに蓄電した電力をどのように活用しているか、また、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)終了を見据え、どのような課題があるのかを明らかにしたもので、今後の自給自足住宅の方向性を明らかにした。
積水化学工業が「VtoH搭載実邸の利用状況調査2018」をまとめた。
同社は、1990年代後半からスマートハウスに取り組み、これまで第1世代=PVのみ(~1997年~)、第2世代=PV+蓄電池(2012~)、第3世代=PV+VtoH(2014年~)と商品開発を進め、現在は第4世代=3電池連携(2016年~)を展開しつつある。
今回の調査は、第3世代の「PV+VtoH」の実邸実績を64件収集、その分析を行ったものである。この調査を通じて「今後の方向性が裏付けられたとともに、課題も浮き彫りになった」(岩本えり子・広報・渉外部長)という。
EV(電気自動車)には、10kWh~40kWhと家庭用蓄電池に比べ大容量の蓄電池が搭載されており、自宅に駐車中は蓄電システムとしての利用が期待できる。ただ、太陽光発電などによる電力をEVに蓄電するだけの一般的な方法に比べ、VtoHは、EVに蓄電した電力を住宅で使えるというメリットがある。
VtoHには「経済モード」(深夜電力をEVに充電して朝晩に自宅放電)と、「グリーンモード」(PVの余剰電力を昼間EVに充電して昼以外に自宅放電)の2つのモードを持つ。今回の実邸はすべて「経済モード」での運転である。
調査によると、EVの蓄電池の年間の電力使用量は自宅での利用が1844kWhと、EV走行の814kWhの2.3倍も多く使われ、EVが走行しない日が3~4割もあった。つまり、自宅へ放電する機能を持つことで、EVの大容量蓄電池をより有効に使うことができるということである。また、年間平均では、蓄電池容量の40~60%が蓄電残量となっており、これを非常時・停電時のバックアップ電源として活用することができる。
一方、グリーンモードでも、EV走行による電力利用量の約1.7倍の電力量を自宅で利用できるという試算となった。グリーンモードは、悪天候でPVの発電量が不足する、EVが昼間走行しておりPVから充電できないといった課題が指摘されている。FIT期間終了後のPV余剰電力の活用策としてEVに期待が集まるなか、同社では、今後、住宅とEVの連携をさらに強化することで電力の自給自足率を高めた暮らしを実現できるとしている。
同社は今年4月、新型「スマートパワーステーションFR」を発売した。ここに搭載したのが1つのパワーコンディショナー「トライブリッドパワコン」でPVと蓄電池、VtoHを連携する新型のVtoHシステム。グリーンモードの課題を、4kWhの蓄電池を併用することで補完し、さらなる自給率、自己消費率の拡大を目指すものである。
今回の調査により「EVはあまり走行しておらず、貯めた電力を消費していない。FIT終了後、走ることに加えて、余った電力をいかに活用していくかが重要。今後、VtoHをもっと深化させていきたい」(塩将一・広報・渉外部 技術渉外部長)と、スマートハウスの取組みを更に進めていく考えだ。
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