「BIMと住まい」【前編】

東京工芸大学 工学部 建築学科 非常勤講師 森谷靖彦 氏

BIMは建物の統合データベース
設計初期の問題抑制でコスト削減

建物の3次元モデル、BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)は、大型建築で用いられるものというイメージが強いが、近年、中小規模の先進的な設計事務所、ビルダーなども次世代の建築生産手法としてBIMの導入を進めている。BIMに詳しい東京工芸大学非常勤講師の森谷靖彦氏に「BIMとは何か」「BIMを活用することでどのようなメリットを享受できるのか」伺った。

──BIMとは何か、活用することでどのようなメリットを享受できるのかを教えてください。

東京工芸大学 工学部 建築学科 非常勤講師 森谷靖彦/1966年生まれ。一級建築士。宅地建物取引士。二級知的財産管理技能士。NTTファシリティーズ総合研究所で建築情報処理技術を研究する傍ら、公益社団法人日本建築積算協会の理事を務める。近著に「BIM その進化と活用」(日刊建設通信新聞社)などがある。

BIMとは、コンピューター上に作成した建物の3次元モデルのなかに、ドアや窓などの材料・部材の仕様・性能、さらに仕上げ、コスト、プロジェクト管理情報などの属性データを追加した建物の統合データベースです。建築の設計、施工から維持管理まで、建築物のライフサイクル全体に及ぶあらゆる工程で、建物の様々な情報を有効に活用するための仕組みであると言えます。

ここでいう建物の3次元モデルとは、一般的には3次元CADで作成されたCADモデルのことです。このCADモデルに従来のCADでは扱えなかった様々な属性データを付加したものがBIMモデルとなります。3次元CADとBIMの違いは、扱うデータが建物の形状情報だけなのか、形状情報に加えて、さらに様々な情報を扱うことができるのかという点にあります。

BIMを用いることで、様々なメリットが享受できます。まず、設計者が頭の中に思い描いていた3次元の建物を、そのままコンピューター上に表現できるため、設計者の意図を伝達しやすくなります。これによって、設計者以外の関係者は、多くの2次元図面を見ながら竣工後の建物を想像するという重労働から解放されます。さらに、2次元図面では難しかった躯体と設備の立体的な干渉チェックなども容易に行うことが可能になります。こうした表現能力を備えたBIMの活用により、設計者、施工者、発注者など、建築プロジェクトに携わる関係者は、設計、施工から維持管理まで建物のライフサイクルのあらゆる工程で建物情報を共有し活用できるというメリットを享受できます。結果として、関係者間の意思疎通を円滑化し、建築設計の生産性向上が期待できます。


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