ハチドリ電力 小野悠希さん 誰かの「ひとしずく」が世界を変える

100％自然エネルギーの新電力
気付いてしまった人を増やすために

そして、ついに「ハチドリ電力」をスタートすることになる。小野さんの打ち立てた事業プランは、CO2排出係数ゼロの自然エネルギー100％のみを販売するというもの。これまた無謀なチャレンジに映る。「私たちが事業をスタートした当時、自然エネルギー100％だけを提供するサービスはほとんどありませんでした。無理だよと言われることもありました」。

現在、ハチドリ電力は小売業者としての認可を取得し、太陽光発電で発電した電力を直接仕入れたり、非化石証書付きの電力を市場から調達するという仕組みで事業を展開している。しかも山肌を削って設置したメガソーラーなどの電力は購入しないという徹底ぶり。地球環境のために自然環境を破壊しては意味がないからだ。

電力料金の1％を自然エネルギー基金に、さらに1％を社会活動などに寄付する仕組みも整えた。社会活動への寄付は、ハチドリ電力のユーザーが応援したい活動を選ぶことができる。この点こそがハチドリ電力の大きな特徴になっている。

地球温暖化のために何かを行いたいが、何をやっていいか分からないという人も多いだろう。「気付いてしまった人」の気持ちがなんらかの行動に移るように、そっと背中を押してあげる。その役割もハチドリ電力は担おうとしている。寄付を行った団体などからは、ユーザーに対して報告書などが届くようになっている。

ハチドリ・アカデミーという取り組みをスタートさせている。ハチドリ電力を使っている「ハチドリ会員」のなかには、自らソーシャルビジネスを行うユーザーも多い。こうしたハチドリ会員の話を聞いてもらい、地球温暖化問題以外の部分でもユーザーに「気付き」を提供したい。それが小野さんの考え。

ハチドリ・アカデミーを通じて、自然エネルギーを使うだけでなく、様々な社会問題に気付き、何らかの行動を起こす人を増やしていく―。こういう好循環を小野さんは生み出していきたいのだろう。

かつての小野さんのように、日本でも「気付いてしまった人」は確実に増えているようだ。実際に「（CO2を排出していることを気にせずに）気持ちよく電気を使えます」という声も届いているという。

次ページ：私は、私にできることをしているだけ