2026.6.19

性能、それとも価格? 中古住宅をめぐる「性能向上」と「アフォーダビリティ」のトレードオフ問題

ケイアイスター不動産の「二刀流戦略」から考える

 

ケイアイスター不動産は、主力事業である新築分譲住宅に加えて、中古住宅再生事業に注力する方針を発表した。新築と中古という「二刀流戦略」によって、「すべての人に持ち家を」をというビジョンを具現化したい方針だ。同社の取り組みは、中古住宅をめぐる「性能向上」と「アフォーダビリティ」のトレードオフ問題に一石を投じるものになりそうだ。

首都圏の中古戸建の成約件数  4割弱も伸長

新築住宅の価格高騰を背景として、中古住宅市場が活況を呈している。(公財)東日本不動産流通機構がまとめた「2025年度の首都圏における不動産流通動向調査結果」によると、首都圏の中古住宅の成約件数はマンション、戸建住宅ともに3年連続で増加し、過去最高を記録した。

とくに戸建住宅の成約件数は、前年度比38.9%増という伸びを見せており、戸建住宅市場においても、「中古住宅」という選択肢の存在感が強まってきている。

こうした状況下で大手ハウスメーカーなどを中心として、買取再販事業を強化する動きが活発化してきている。地域の工務店でも、新たに買取再販事業に乗り出す企業が目立ってきている。

各社ともに、新築ではカバーできない需要層を中古住宅で補おうという戦略を打ち出している。

ケイアイスター不動産は1700万円代で中古再生住宅を販売  粗利率20%を確保

年間1万棟以上の戸建分譲住宅を供給するケイアイスター不動産では、2025年から中古再生事業に乗り出している。参入からわずか1年で23店舗・仕入約500棟という実績を残している。早期に100棟店舗体制を実現し、シェアナンバーワンを目指していく方針だ。

同社が中古再生事業で重要視するのは、アフォーダビリティの確保。新築住宅の価格が値上がりするなかで、「すべての人に持ち家を」という同社のビジョンを具現化するために、「中古住宅をより手が届く価格で供給することが重要」と判断したという。

そこで、「平均1700万円代」という値段で中古住宅を供給する事業を強化している。しかも、倒産・解雇時に最大6カ月にわたり月額5万円を支給するというサポートサービスも提供する。その一方で低価格でありながら、粗利率20%以上を目指すという方針も打ち出している。

そのために、新築事業で培った資材の大量一括購買力、さらには自社職人ネットワークを活用し、徹底的に効率化を図っていく考えだ。

アフォーダビリティを確保することで生まれる新たな需要も

「平均1700万円代・粗利率20%以上」という目標を達成するためには、恐らく物件を仕入れた後のリフォーム工事に、大きなコストと手間をかけることはできないだろう。既存ストックの性能向上を図ろうとすると、販売価格は上昇し、必然的にアフォーダビリティは低下していくからだ。

現在の中古住宅市場の活況を支えている要因は、新築住宅に手が届かない層の需要をカバーしているという点である。ケイアイスター不動産によると、平均1700万円代という価格で市場に供給することで、二地域居住やアトリエとしての使用といった思わぬ需要の開拓にもつながっているという。ある意味では、低価格であるからこそ、新しい住宅需要を掘り起こしているとも言えそうだ。

しかし、一方では良質なストックの形成や住宅分野における脱炭素化といった社会的要請を考えると、中古住宅として流通する段階でそれなりの性能向上リフォームを施すことも重要である。

アフォーダビリティとトレードオフの関係にならない性能向上リフォーム技術あればいいが、現実的には難しいだろう。

もしくは、性能向上を図った中古住宅の資産価値を適正に評価し、金融的な措置によって購入者の経済的な負担を減らす仕組みができれば、必ずしも性能向上とアフォーダビリティがトレードオフにならない状況を作り上げることができるかもしれない。

優先すべきは性能向上かフォーダビリティか

優先すべきは性能向上か、アフォーダビリティか―。

この問いは、何も中古住宅に限った話ではない。新築も同じ問題を抱えているわけだが、新築以上に低価格であることが求められる中古住宅では、より悩ましい問題である。その一方で単純な対立軸で考えることでもないだろう。

中古住宅の性能を客観的に見える化する仕組みを整え、その情報を得た消費者が自らのニーズに応じて優先すべき事項を判断する。まずは、早急にそういった市場環境を整備することが求められそうだ。