日頃から書きなぐっていた取材ノートや備忘メモに埋もれていた諸々を拾い、不定期で自由気ままに綴ってみようと思います。落ちこぼれた種から何か芽が出てくるかな——。

古川興一ブログ「落ち穂ひろい」
落ち穂ひろい |  2019.12.17

不動産鑑定士が新たに挑戦する災害支援活動

被災者の生活再建第一歩のパスポート発行のために

不動産資格の最高峰と言えば「不動産鑑定士」で、司法試験、公認会計士と並ぶ難関の資格でもある。地価の判断など不動産の鑑定業務については独占的な位置を持つ。国・都道府県の地価公示や地価調査、相続税標準地・固定資産税標準地の鑑定評価などにはなくてはならない存在で、最近では証券化がらみや企業買収による資産価値の評価などの仕事も増えてきている。だだ、住宅、不動産、金融業界などは別にして一般の人とはなかなか触れ合う機会の少ない職種であることも事実。さらに、ときには鑑定価格をめぐってのクライアントのいざこざも。「土を相手だからか、ドロを被ることも」の自虐的な言葉も出る厳しい仕事でもある。

その不動産鑑定士が、このところ大いに意気に燃え、目を輝かせて(?)取り組んでいる新しい仕事があるのをご存知だろうか。

自然災害が頻発する中での不動産鑑定士による被災地・被災者への支援活動がそれだ。自然災害と不動産鑑定士の結びつきに首をかしげる向きもあろうが、被災地、被災者にとっては極めて、頼りになる、ありがたい存在なのだ。その活動とは、罹災証明書発行のための「住家被害認定調査」である。被害認定調査は被災した住宅について住宅の傾斜、屋根、壁内部などの損傷度合いを認定するもので、全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊の4区分で認定される。これにもとづいて市町村から発行されるのが罹災証明書であり、これがあってはじめて生活再建支援金の支給、融資、税金などの減免・猶予、応急仮設住宅への入居、住宅の応急修理などが得られる。被災者にとってはいわば、生活再建の第一歩となるパスポートのようなものだ。迅速な調査、発行が求められるのは当然だろう。

だが、この調査、発行は、そんなに簡単なものではない。専門的な知識が求められるし、被災者を納得させる説明能力も必要。業務を担う市町村には対応できる職員は少なく、専門家による支援がどうしても必要となる。特に最近のように災害が大規模化するとなおさらである。そこで頼りにされるのが不動産鑑定士であり、組織としての日本不動産鑑定士協会連合会である。不動産ジャーナリスト会議でこのほど会見した同連合会の吉村真行会長は「自然災害が最近のように頻発し、しかも大規模化すると、とても自冶体では物理的にも手に負えない。我々へのSOS要請となるが、被害調査や罹災証明書発行ばかりでなく、住まい確保や債務返済など被災者からの相談も多い。自冶体からはいざというときに備えた協定申込も相次いでいるが、我々としては、不動産鑑定士の社会的使命として出来る限り対応していく考え」と社会貢献活動として前向きの姿勢を見せる。

同連合会が支援活動を始めた最初が平成28年の熊本地震で同県南阿蘇村に143人を派遣、平成30年には大阪府北部地震に296人、西日本豪雨に187人 、北海道胆振東部地震に208人、そして令和に入っても九州北部豪雨、台風15号、同19号と立て続けの支援活動が全国の地方協会からの応援も得て続いている。

こうした状況の中で吉村会長は「会員に対する研修、調査トレーニングを行うと共に必要な教材の作成などに取り組んでいる」としているが、加えて力を入れているのが「調査、発行、相談の主役となる自冶体の職員への研修」であり、「我々としてはこれから研修、指導、助言など被災冶自体に対する総合プロデユース的な支援に重点をおきたい」と語る。

この被災地支援活動、不動産鑑定士にとって今はボランテイア的な色彩も強いが、頻発する自然災害のもと、自冶体からの要請は益々高まる気がするし、その重要性からビジネス的にも不動産鑑定士の新たな挑戦分野になる可能性が無きにしも非ずだ。生活再建の第一歩のパスポート発行を担う不動産鑑定士、そこからは妙なドロを被るのではなく、泥にまみれた笑顔の不動産鑑定士の姿も浮かび上がるのだが。はて、さてーーー。 

不動産ジャーナリスト会議で会見を行う日本不動産鑑定士協会連合会の吉村真行会長
東京都不動産鑑定士協会が発行する支援活動レポート